団体貸出



「おひるのじかん」
佐々木 好美

 

あいちゃんはいつも むぎちゃをもってくる。
きゅうしょくのじかんになると ぎゅうにゅうのかわりに むぎちゃをのむんだ。
  「あいちゃん ぎゅうにゅうのまないと おおきくなれないんだよ」
ぼくは あいちゃんにいったんだ。
そしたら あいちゃん 下をむいちゃった。
なんでかな どうしてかな。
ぼくがぎゅうにゅうを のまないでいると せんせいに おこられる。
なのにあいちゃんは のまなくても だれにもなにも いわれない。
あいちゃんはいつも おべんとうをもってくる。
きゅうしょくのじかんになるとひとりだけ おべんとうをたべるんだ。
  「あいちゃんも きゅうしょくたべないとダメだよ」
ぼくは あいちゃんに いったんだ。
そしたらあいちゃん また下をむいちゃった。
なんでかな どうしてかな。
ずるいよ あいちゃん。
みんなキライなものが きゅうしょくにでたってがんばってたべているんだ!
  「ねぇ あいちゃん。あいちゃんのキライなたべものって なぁに?」
ぼくは あいちゃんにきいたんだ。
そしたらあいちゃん こんどはわらって
  「ないよ」
ってこたえた。
  「ピーマンも?」
  「たべるよ」
  「トマトも?」 
  「たべるよ」
  「じゃぁ しいたけは?」
  「もちろん たべる」
へーっ すごいや。
これみんな ぼくのキライなものだもの。
  「ぎゅうにゅうは?」ってきいたら あいちゃんちょっぴり こまったかおをした。
  「ぎゅうにゅうは……のめないの」
  「なんだ キライなものあるじゃん!」
  「ちがうよ アレルギーなんだよ」
アレルギー? ぼくが はじめてきいたことば。
  「ぎゅうにゅうのむとね からだじゅうがボコボコになって とってもかゆくなっちゃうの。いきもくるしくなってくるの」
たまごも こむぎも おんなじなんだって。
  「だからね プリンとかアイスクリームとかクッキーとかも たべられないよ」
そりゃたいへんだぁ!
だって ぼくが大すきなものばっかりなんだもの。
ぼくは あいちゃんのおべんとうを のぞきこんだ。
きいろくて しかくいものがある。
  「それ なぁに?」
  「おさかなとかぼちゃで おかあさんが つくってくれたの」
それは、きゅうしょくの たまごやきに とってもよくにていた。
  「これは?」
ぼくのめのまえにあるしょくパンよりも すこし小さなもの。
  「これはね お米でできたパンなんだ」
そうか あいちゃん。あいちゃんもほんとうはきゅうしょくがたべたいって思ってるんだね。でもたべられないから おべんとうなんだ。のめないからむぎちゃなんだ。
ぼくは あいちゃんが きゅうしょくをたべていなくっても ちっとも気にならなくなった。
いっしょにたべて いっしょにわらって。
今はたのしい おひるのじかん。

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