団体貸出



「ほしがきらきら」
春子

 

 あるひのごごです。
  カオルくんは、おかあさんと、あるいています。かいものの、かえりです。
 すると、おおきなクリームいろのいぬをつれたおにいさんが、あるいてきました。
「わぁ、かわいいい!」
  カオルくんは、おもわずさけびました。そして、いぬをなでなでしました。
「こらっ、カオル、いぬにさわっちゃだめ。このワンちゃんは、おしごとちゅうなのよ」
  おかあさんは、そういいました。
「きをつかってもらってすみません」
  おにいさんが、にっこりとして、いいました。いぬは、カオルくんをチラッとみました。
「おしごとちゅうって? どういうこと?」
  カオルくんは、いいました。
「このいぬは、マーブルっていうんだ。おんなのこだよ。ぼくはね、じつはめがみえないんだ。だから、ぼくはこのかしこいマーブルに、いろいろとてつだってもらってるんだ」
「へぇ。すごいいぬなんだなあ」
「そうだよ。ひとがいて、ぶつかりそうだったら、ちゃんとよけてくれる。かいだんがあったら、ちゃんととまってくれる」
  マーブルは、おとなしくすわっています。
「さ、いくわよ。カオル」
  と、おかあさん。
「おにいさん、マーブルちゃん、またね」 
  さんにんといっぴきは、えがおでさよならしました。
  そして、いっしゅうかんご。
  カオルくんは、いえのすぐそばのこうえんで、あそんでいます。すると、こえがしました。
「やぁ、このあいだのぼうやだね。こんにちは」
  このまえあった、おにいさんとマーブルです。
「ああ! こんにちは! またあっちゃった!」
  カオルくんは、げんきにあいさつしました。ですが、すこしかんがえました。
「あ……。でもおにいさん、めがみえないのに、なんでぼくとわかったの?」
  おにいさんは、ベンチにこしをかけました。
  そして、いいました。
「きみ、ポケットのなかに、すずがはいってるでしょ。このまえあったときも、おとがしてた。
おなじおとだったからね。」
「おかあさんにもらったキーホルダーなんだ!そうかあ、このすずでわかったんだ!」
「めはみえなくても、きこえるからね。かぜを、かんじることもできる。はなのかおりをかぐことも、できる」
  カオルくんも、ベンチにすわりました。マーブルも、そばにすわっています。
  きょうはいいてんき、そらはあおくあおく、すんでいます。
「おにいさん、ひとつ、しつもんしてもいい?」
  カオルくんは、いいました。
「いいよ。なんだい?」
「めがみえないって、 どんなかんじなの? なにもみえないって、なにがみえるの?」
  おにいさんは、おだやかにいいました。
「ぼくには、うちゅうがみえるんだ」
「うちゅう?」
「そうさ。ぼくのまわりは、うちゅうがひろがってる。そしてそこには、たくさんのほしがある。ほんとうにきれいだよ」
「へえ、ふしぎ……。すごいや」
「うん。ときにはながれぼしもね。いいでしょう?でも、めがみえなくてこまっているひとがいたら、きがるにはなしかけて、たすけてほしいな」
「はい」
  カオルくんは、めをとじながら、そうこたえました。そしてマーブルは、ゆめみるように、うえをむきました。
  いま、マーブルと、カオルくんと、おにいさんのまわりには、ほしがいっぱいです。
ほしがきらきら、うちゅうのなかにいます。
  はてしない、うちゅうのなかに―。
 

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