団体貸出



「道具係はあらいぐまくん」
川嶋 里子

 

 森の動物たちが、運動会を開くことになりました。場所は、一本杉の立つ原っぱです。
 運動会の道具係になったのは、あらいぐまくんです。何やら、うでをくんで考えていますよ。
  (玉入れの玉って、どれくらいの大きさにすればいいのかな?)
 あらいぐまくんは、ふと思ったのです。自分にちょうどいい大きさの玉だと、つかめない友だちがでてくるんじゃないかな…と。
  そこで、そばにいた、ねずみくんときつねくんとくまくんにきいてみました。すると、
  「そんなの、ふつうでいいんじゃない?」
三匹は声をそろえて言いました。
  「ふつうって?」
  「そうだな、これくらい。」
  三匹はそれぞれ、自分の手を、ジャンケンの
「グー」の形にして出しました。
  あらいぐまくんの目の前には、三つの「グー」がならびました。自分のよりとても大きな「グー」と、自分のと同じくらいの「グー」と、そして自分のよりもっと小さな「グー」です。
  「そうかあ。じゃあ、かごの高さは、どれぐらいにすればいいのかな?」
  「それも、ふつうでいいんじゃない?」
とまた、三匹は声をそろえて言いました。
  「ふつうって?」
  すると三匹とも、自分の頭の高さよりもちょっと上を見上げて指さしました。
  「ふーん…。じゃあ、リレーのバトンは、どれくらいの長さにすればいいのかな?」
  「それもふつうでいいんじゃない?」
  「うん、そうだよ。ふつうでいいよ。」
  「あらいぐまさんさっきから、何をごちゃごちゃ考えてるの?全部ふつうでいいよ。」
  「ふつうって?どれくらいの長さなの?」
  「そうだな、これくらい。」
  三匹はそれぞれ、自分の肩はばくらいの長さを手で表しました。
  (そうか。…それにしても、ふつうって、たくさんあるなあ。)
  あらいぐまくんは、ふーっとため息をつきました。

 さて、運動会の日になりました。
 玉入れが始まっています。おやおや、いろんな玉があります。どんぐりにまつぼっくり。赤くうれた柿の実をなげているのは、くま君です。かごも、大きいの、それより小さいの、もっと小さいの…と、三つのかごが、一本杉の幹に、上から順にくくりつけられています。
 リレーが始まりました。みんな自分の手にぴったりの木の枝をにぎっています。バトンタッチは、枝と枝をカチンと合わせれば、オーケー。みんな楽しそうです。
 最後の種目は、大玉送りでした。だれがさわっても重くないようにと、あらいぐまくんが考えに考えて作った大玉です。落ち葉を集めて丸くし、細いつるでくるくると巻きあげてあります。ふんわりふわふわ、みんなの頭の上をとんでいきますよ。おや、くまくんの肩にねずみくんがのっかって、落葉の大玉にタッチ!ねずみくん、大はしゃぎです。
  楽しかった運動会が終り、お日さまが静かにしずもうとしています。その時、だれかが言いました。
  「あらいぐまくんがいないよ。どこへ行っちゃったんだろう?」
みんなであたりをさがしました。すると…
いました、いました。道具箱の中で、つかれてねむってしまったのですね。
  みんなが何やら、そうだんを始めました。
おや?だれかが細長い木を二本、持って来ました。それを道具箱にくくりつけて…。
  ワッショイ ワッショイ
  あらいぐまくん ワッショイ

 道具箱の中のあらいぐまくん、おみこしみたいにかつがれて、びっくりしてとびおきました。
 おつかれさまでした、あらいぐまくん。

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