団体貸出



「ぼくたちは兄弟〜ぼくの弟・ぼくのお兄ちゃん〜」
くどう えみ

 

 〜ぼくの弟〜

 ぼくには弟がいる。
 名前は「さとし」。

 弟は自分勝手だ。  
  いっつもぼくのじゃまをするし、
  すぐわめく。
  お母さんに叱られるのは、いつもぼく。
  お兄ちゃんだから。

 ぼくたちはよくケンカをする。
  とっくみあいの大ゲンカだ。

 「二人とも!いいかげんにしなさい!」
  お母さんの怒鳴り声。
  「お兄ちゃんになぐられたあ。」
  弟が泣きだした。
  ぼくだって・・・
  「お兄ちゃんがあ。うわあん。」
  ぼくだって・・・ぼくだって。

 「さとし!どこ行くの!?」
  突然、弟が家から飛び出した。
  「ぼくがつかまえてくる!」
  ぼくも急いで家から飛び出す。

 ポロン。ポタン。
  ポロンポタン。
 がまんしていた涙があふれてきた。
  ぼくは全力で走る。
  運動会の時よりずっと早く。
  走れ。走れ。

 「あっ!!」  
  前を走っていた弟がこけた。
  「お兄ちゃん、痛いよお。」  
  弟は大きな声でぼくのことを呼びながら振り返る。
  ぼくの涙は、もう止まっていた。

 「かえるぞ。」  
  「うん。」
  ぼくは弟をおんぶして家に帰る。
  弟は笑っていた。


 〜ぼくのお兄ちゃん〜

 ぼくにはお兄ちゃんがいる。
 名前は「あきら」。

 お兄ちゃんはいじわるだ。
  いっつもいばってて、
  ぼくに命令ばっかりする。
  ぼくが弟だから。

 ぼくたちはよくケンカをする。
  とっくみあいの大ゲンカだ。

 「二人とも!いいかげんにしなさい!」 
  あっママだ。
  「お兄ちゃんになぐられたあ。」
  ぼくはありったけの大声でさけぶ。
  「おにいちゃんがあ。うわあん。」
  ぼくは泣きながら、こっそりお兄ちゃんの方を見た。

 あれ・・・?お兄ちゃんが泣きそうだ。  
  ぼくは部屋を出て玄関に向かうと、
 靴もはかずに外へ飛び出した。

 ドクン。ドクン。
  ドキンドキン。
  お兄ちゃん、ぼくの前では泣くのをがまんしてたんだ。
  ぼくは一生けんめい走る。
  おにごっこの時みたいに。
  走れ。走れ。

 誰かが後ろから追いかけてきた。
  振り向こうとしたその時、
  「あっ!!」

 どってーん!

 「お兄ちゃん、痛いよお。」
  振り返るとやっぱりお兄ちゃんが立っていた。
  ぼく、泣いてなんかいないよ。  
  「かえるぞ。」
  「うん。」
  ぼくはお兄ちゃんにおんぶしてもらって家に帰る。
  お兄ちゃんは笑っていた。

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