「おいっ!ギン太。ドッジボールやろうぜ!もちろん、やるよなぁ。」
「う、うん。」
ペンギンのギン太は、ライオンのガオーから、いつものように、ドッジボールにさそわれました。
本当のところ、ギン太は、ドッジボールよりも、絵を描いているほうが好きでした。でも、ガオーのさそい方が、おどすようにむりやりなので、いつも断れません。
ドッジボールをしている間、ギン太はあまり楽しくありませんでした。気が進まないまま、ドッジボールをしなくてはならないのとクラスの中で一番ドッジボールが、へただったからです。
そのとき、担任のうさぎのウサ子先生は、大きな耳で、生徒たちのやりとりを、聞いていました。
そして、その日の終りの会の時、先生はみんなに言いました。
「自分のしたくないことは、断ることもできますよ。そして、まわりのひとも自分自身もその思いを大切にしなくてはなりません。断るときは、きちんと言うこと。わかりましたか。」
「はーい。」
生徒たちの大きな返事が、教室に響きました。
次の日。
「おい、ギン太。ドッジボールやろうぜ!」
ガオーが、さそってきたので、ギン太は、自分の本当の気持ちを言うことにしました。
「ぼ、ぼく、絵を描いてるほうが好きなんだ。だから、ドッジボール、やりたくない。」
「何ぃ!」
ガオーは一瞬、怖い顔をしましたが、昨日の終りの会でウサ子先生が言ったことを思い出しました。そして、
「わかった。」
と言ったのです。
ただ、その日以来、ガオーは、ギン太をドッジボールにさそわなくなりました。
ギン太は、断った自分が悪かったように思えて、さびしい気持ちにもなりましたが、あのときドッジボールをしたくなかった自分自身の思いを、大切にすることにしました。でも、それから毎日みんなが笑顔でドッジボールをしているのを教室からながめていると、たまには自分も仲間に入りたいと思うようにもなりました。
数日後のことです。朝の会のとき、ウサ子先生が言いました。
「今日は、すばらしいニュースがあります。ギン太君の絵が、学校で一番になりました。」
ギン太は、突然のことで、おどろきましたが、飛び上がるほど、うれしく思いました。
学校中の生徒の前で、表彰されるギン太を、クラスのみんなは、大きな拍手でお祝いしました。
その日の放課後、ガオーがギン太に近寄ってきました。
「おい、ギン太。」
ギン太は、少し、かまえました。
「今日のギン太、かっこよかったぞ。」
ガオーは、にっこりして、それだけ言うと、ランドセルを右肩に引っ掛け、帰ろうとしました。
「ありがとう。あ、あの、またいつか、ぼくもドッジボールにいれてね。」
ギン太の中でつっかえていた何かが取れました。
「いつでもいれてやるよ。」
ガオーは、ギン太の思いがけない言葉にも怒ったりしませんでした。それどころか、肩越しに見えたガオーの顔は、確かに笑顔でした。
それから、ギン太は、たまに、自分からドッジボールに入れてもらっています。一番へたですが一生けんめいです。
「今だ、ギン太!あてろ!」
そこには、笑顔のガオーとギン太がいました。
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