団体貸出



「おもちゃばこ」
たきした ひろみ

 

  ポチは、ちゃいろいけなみの、おもちゃの犬です。
  まあくん、という男の子となかよしで、だっこしてくれるとクンクンなきます。あたま
をなでてもらえれば、しっぽもふれます。
「やわらかくて、かわいいわ」
  まあくんのともだちのあんなちゃんも、ポチをほめます。
  ところが、しっぽがうごかなくなりました。
「こわれちゃった、つまんないの」
  まあくんはポチを、おもちゃばこにいれたまましらんぷりです。
(まあくん、いっしょにあそびたーい)
  ポチはまいにちはこのなかで、さみしくてたまりません。
  おもちゃばこには、かめんライダーやきかんしゃなど、いっぱいはいったままでした。
みんなさみしそうです。

  まあくんの四才のたんじょうびです。プレゼントは、ぴかぴかのロボット犬でした。
「わー、すごいすごい。なまえはロボだよ。おいでロボ」
  まあくんは、ロボにむちゅうです。
  ロボット犬は、じぶんであるきまわり、お手もおまわりもできます。
「かっこいいだろ」
  まあくんはあんなちゃんに、じまんします。
「ポチをほったらかして、まあくん、きらい」
  あんなちゃんはおこって、かえってしまいました。

  春のごご、おかあさんがまあくんにいいました。
「そうじするから、おもちゃばこは、じぶんでせいりしなさい」
  まあくんはおもちゃばこをえんがわにだして、せいりをはじめました。
「えーっと、かめんライダーは、おいとこうっと。きかんしゃは、いらないや」
  まあくんは、いらないおもちゃを、はこからだしてゆきます。
(ぼくはどうなるんだろう)
  ポチはしんぱいで、ドキドキしています。
「ポチも、こわれたからいらない」
  ぽい、とおもちゃばこからほうりだされてしまいました。
(ぼく、まあくんすきなのに。ひどいよ)
  ポチはせいいっぱい、しっぽをふりました。でもしっぽはうごきません。
  そのとき、かきねのそとをあんなちゃんがとおりました。
「あんなちゃーん、あそぼ」
「まあくんなんて、きらいだもん」
  あんなちゃんは、よこむいていってしまいました。
  まあくんは、しょぼんと、さみしそうです。
  ポチはまあくんがかわいそうになり、しっぽをふって、なぐさめようとしました。
「あれポチ、しっぽをふっているみたい」
  まあくんはポチをだきあげ、ふしぎそうにいいます。
「ポチって、やわらかい。きもちいー」
  まあくんはポチをぎゅっとだきしめて、
「あんなちゃん、なかよしだったのに、しらんぷりなんだ。さみしいな」
と、いいました。そして、
「あ、ポチもさみしかったのか。ごめんよ、しらんぷりして」
といいました。
  そしてきかんしゃも、おもちゃばこにかえしました。
(これからずっとなかよしなんだ。よかった)
  ポチはうれしくて、うごかないけれど、いっしょうけんめい、しっぽをふろうとしまし
た。