生涯学習大阪計画 ~自律と協働の生涯学習社会を目指して~

はじめに 第1章 第2章 第3章 第4章

第 5章 計画推進のしくみ

1  生涯学習を支えるネットワークづくり

(1)3つの学習圏の再編による、生涯学習支援システムの再構築

・大阪市では、平成4年(1992年)に策定した「前計画」において、「広域」「ターミナル」「地域」の3つの学習圏からなる「生涯学習支援システム」を設定し、その考え方に基づき今日まで生涯学習施策を推進してきました。

・「生涯学習大阪計画」では、「大阪市世論調査」(平成15年(2003年)実施)の結果もふまえ、市民に身近で関心が高い従来の「地域」学習圏を、「教育コミュニティ」づくりの基本単位である「小学校区」と、「各区生涯学習推進計画」に基づき生涯学習施策の展開を図っている「区域」とに分け、「ターミナル」学習圏については「広域」学習圏とともに、「小学校区」「区域」を広域的、総合的に支援する学習圏として位置づけ、3層の学習圏相互のネットワークをいっそう強化することにより新たな生涯学習支援システムとして再構築します。


(2)「小学校区」におけるネットワーク

・「前計画」では、小・中学校を「地域の学習センター」として位置づけてきましたが、「生涯学習大阪計画」では、「地域」の学習圏を「小学校区」にするとともに、小学校を「教育コミュニティ」づくりの拠点として位置づけます。

・「小学校区教育協議会-はぐくみネット-」事業を核として、生涯学習ルーム事業や児童いきいき放課後事業、学校体育施設開放事業、PTA、図書活動などの協働を進めます。また、青少年育成や人権啓発、緑化、スポーツなど、市民に学習機会や情報を提供する事業については、事業ごとに組織されている運営委員会等が柔軟に運営されるよう担当部局との調整を図りつつ、連携・協働を進めます。


1)「教育コミュニティ」支援体制の必要性

・小学校区を中心とした「教育コミュニティ」づくりは、小学校が学校教育の場であるとともに、青少年の育成、生涯学習、人権啓発、スポーツなどのさまざまな「教育コミュニティ」づくりの拠点となることをめざすもので、小学校の果たす役割はますます大きなものとなります。

・小学校が、子どもの学力向上や学習内容の多様化に対する、近年の市民から寄せられる期待の高まりに応えながら、さらに「教育コミュニティ」づくりの拠点として、「地域の教育力」を高めていくためには、相応の体制づくりと学校と地域社会を結ぶネットワークづくりが必要です。

2)「教育コミュニティ」支援体制の果たす機能

・「教育コミュニティ」の支援体制として、各小学校区の課題に随時対応し、助言や情報提供ができるよう、社会教育主事などの専門的職員が、総合生涯学習センターや市民学習センターなどの中核・拠点施設を通じて、区域のネットワークとも連携を図りながら、相互ネットワークを活かした「教育コミュニティ」支援体制を構築します。

・「教育コミュニティ」づくりの推進の中心的役割を果たす生涯学習推進員や「はぐくみネット」コーディネーターをはじめ、「教育コミュニティ」関連各事業の調整役などに対する指導・助言、情報提供、養成・研修を行い、市民主体の活動を支援しながら、「市民力」の醸成を支援します。

・具体的には、事業実施のための、事業計画の企画・運営、広報、各種団体間の調整や、特色ある先進事例の紹介、区役所や地域社会の諸団体・NPOとのコーディネート、「ネットワーク型市民セミナー 出前講座型」や大阪市生涯学習インストラクターバンク、青少年活動リーダーバンクなど講師派遣事業の紹介を行います。

・また、計画的に研修機会を設け、「教育コミュニティ」を支える各事業の調整役の養成・研修等を行い、教職員やPTAなど社会教育関係団体指導者に対しては、「総合的な学習の時間」や校外学習で利用可能な生涯学習関連施設や関連事業・制度についての情報提供・コーディネートなどを行います。

・このほか、「教育コミュニティ」関連施策(「はぐくみネット」や生涯学習ルーム事業など)の円滑な運営のため、予算管理や執行、市民説明会の開催、事務手続きなどに対する助言・指導を行うとともに、各小学校区での取組みの交流や発表の機会づくり、体験型・問題解決型の現場で活用しやすい学習プログラムの開発・普及・促進を支援します。


(3)「区域」におけるネットワーク

・市民の自主的な活動を支援し、身近なコミュニティづくりを進めていくためには、区を中心とした生涯学習の推進を図っていくことが、今後ますます重要になってきます。

・本計画に基づき、今後の区における生涯学習施策の方向性を示すものとして、平成12年(2000年)に策定した「区生涯学習推進計画」を基本としながら新たな「区生涯学習推進計画」を策定し、目標年次を平成27年度(2015年度)として、「区域」における施策推進を図ります。なお、中間時点で、社会状況の変化等に応じて見直すこととします。

・各区においては、区民組織「生涯学習推進区民会議」と区役所内の組織「区生涯学習推進本部」を中心に、「区生涯学習推進計画」に基づき、区の生涯学習推進体制の強化を図ります。

・区役所は、総合的な区域の生涯学習施策の中心として位置づけ、生涯学習関連施設連絡会などを活用しながら、事業の調整だけでなく、区内生涯学習関連施設との連携・協働をさらに進め、学校も含めたネットワーク化を図ります。

・各種社会教育関係団体の事務局支援機能を担っている区コミュニティ協会や、各区のPTA協議会・地域女性団体協議会・子供会育成連合協議会・老人会・視聴覚教育協議会・青少年指導員・体育指導委員等、生涯学習分野の市民団体の相互の連携を深め、地域の生涯学習活動を支援し、「教育コミュニティ」づくりを推進します。また、区社会福祉協議会、区人権啓発推進(協議)会等の市民団体との連携・協働を図ります。さらに、従来から実施してきた各区内のNPOや高等教育機関、民間教育機関との協働を進めるとともに、商店街や企業とも連携を図ります。

・各区の歴史・文化資源の掘り起こしや環境・生活文化の再発見につながる講座や事業を、図書館や博物館等とも連携しながら実施し、まちづくりにつなげます。またそのプログラムや情報の提供により、「教育コミュニティ」の活動支援につなげます。

・総合生涯学習センターや市民学習センターなどと連携し、生涯学習推進員区連絡会等とも協働しながら、小学校区における「教育コミュニティ」づくりを支援します。

1)現代的・社会的課題に関する学習機会の提供

・身近で、育児期の保護者も活動しやすい区域という特性から、すでに活動している子育てサークルやNPOとも連携しながら、親子参加型の事業を開催するとともに、保育サービスの充実を図りつつ、家庭の教育力を高めるような学習機会を提供します。

・「団塊の世代」の定年退職期を迎え、そのキャリアを地域社会の生涯学習活動の中で活かし活躍できるよう、人材発見と活用に努めるとともに、コミュニティビジネス※ やNPO等が地域社会で行う生涯学習活動などについての情報提供を図ります。

(※コミュニティビジネス…地域住民などが、地域課題やニーズに対応し、その解決のために必要なサービスなどを有償で提供する事業のことで、創業の促進や地域社会の活性化、雇用の創出につながると期待される。単に経済的利益のみを目的とするのではなく、生活者の立場にたち、さまざまな形で地域社会の利益を増大させることを目的とする。)

2)情報提供・相談

・地域図書館については、地域社会の情報や生活情報など、市民が必要とするさまざまな分野の情報や資料を提供する、各区の総合的な情報センターとしての機能を充実させます。

・区民の主体的な活動を支えるため、生涯学習相談員については、人材の発見と資質の向上を図るとともに、総合生涯学習センター等の生涯学習施設の情報収集・提供と学習相談機能とも連動し、情報交換・研修の充実により、各区生涯学習情報コーナーにおける情報提供、学習相談をさらに高度化・円滑化します。委嘱期間が終了した生涯学習相談員については、その職務上の経験を、「はぐくみネット」のコーディネーターや生涯学習推進員として活かせるような方向性を検討します。

・各区内での市民の自主的な学習活動を促進するため、区広報紙やホームページ、冊子等を活用した区民向けの生涯学習情報の提供・充実に努めます。

・区民センター等の生涯学習関連施設や、市民や団体・サークルなどが利用する施設では、「市民団体やNPOの相互交流・情報交換の場」を設け、小グループが打合せや作業がしやすい学習環境の整備により、市民の日常的な生涯学習活動を支援します。

(4)「広域」におけるネットワーク

・「広域」学習圏においては、総合生涯学習センターや市民学習センターをはじめ、博物館や図書館などの生涯学習関連施設間でネットワークを構築し、「小学校区」「区域」における生涯学習の取組みを支援します。

・中核施設としてより高度な機能を果たす総合生涯学習センター、市民学習センターは、今まで培ってきた市民主体の生涯学習推進の機能や実績を十分に活かしたうえで、それぞれの近隣区を中心に市内全域を網羅しながら、地域社会における生涯学習を支えるコーディネーターなどの人材の研修・養成などを担い、学習グループやNPOと連携したネットワークを築き、より効果的で総合的な生涯学習施策を推進します。

・総合生涯学習センター等の広域施設において、生涯学習関係職員が、本計画をはじめとする大阪市の生涯学習政策について理解を深め、市民の主体的な学習を支援するための専門的な知識・技術等を習得するために必要な研修を行います。


2  生涯学習関連施設の機能の充実

・すべての生涯学習関連施設において、市民の学習ニーズに応えその学習を支援し、社会に参画するための活動にまで結び付けることをめざした「情報提供・相談機能」や「市民グループやNPOで活躍する各事業の調整役に対するサポート機能」や「行政と市民、企業の間のコーディネート機能」の充実に努めます。

・学習・文化・スポーツ等、さまざまな市民の自主的な活動が活発に行われるために、各施設では、就業者や育児期の保護者などが都合の良い時間に気軽に利用できるよう、施設設備・機能等の充実に努めます。

(1)中核施設:総合生涯学習センター

・総合生涯学習センターは、従来の機能を基本に、時代の変化に対応した機能を発揮しながら、全市生涯学習推進の「中核施設」として各市民学習センターをはじめとする生涯学習施設間のネットワークの中で、次のような中心的な役割を果たします。

1)情報収集・提供と学習相談

・総合生涯学習センターや市民学習センター等の生涯学習施設などで実施された講座やイベント等のうち、提供可能なものについて、事業終了後も一定期間データベースに保存し、インターネット上でテーマごとに閲覧可能とすることにより、時間や場所の制約を受けずに学習できるしくみづくりを行います。

・「生涯学習情報提供システム」の運用・改善、情報誌発行等により、各学習圏で求められる情報提供を行います。

・「まなび」と「活動」は相互作用により深められるものであり、地域社会の主役としての市民の主体的な生涯学習を支援するために、学習とその後の地域活動やNPO活動などへの参加について、幅広く相談に応じられるよう、学習相談機能の高度化・円滑化を図ります。

・国内・外の生涯学習関連情報・資料の収集・調査を行い、他の生涯学習関連施設からの相談に対応するとともに、今後の大阪市の施策形成や市民の活動の参考となる資料・事例・分析結果の集積を図ります。

2)現代的・社会的課題に関する学習機会の提供

・現代的・社会的課題に市民が主体的に対応し自己実現できるよう、自己教育力や、ITを活用したコミュニケーション能力、市民力を醸成するための学習プログラムの開発を行い、先行的に実施します。開発されたプログラムについては、市民学習センターをはじめ、各生涯学習施設にその成果を提供します。

・市民学習センター等関連施設を実施場所として、非識字、デジタル・ディバイド※ などの課題を抱える市民や、学習機会から疎遠な状況に置かれてきた市民に対する学習機会・基礎教育機会が充実されるよう、関連事業の進捗管理を行います。

(※デジタル・ディバイド…インターネットやパソコン、携帯電話等を使って、情報を探したり入手したりすることが簡単にできるかどうかによって、さまざまな格差が生じること。)

・大阪市の各部局・国・大阪府と協働してプログラムを企画開発する「ネットワーク型市民セミナー 拠点型」を実施します。また、各部局・事業所等から、各区や小学校区に職員が出向いて、市民の希望する内容や日程・規模などに応じた形で行う「ネットワーク型市民セミナー 出前講座型」の推進を図り、申込みや利用条件をまとめた冊子やホームページ等の整備を行い、市民への周知に努めます。

3)人材養成・研修

・生涯学習推進員や「はぐくみネット」コーディネーターをはじめ「教育コミュニティ」に関わる市民ボランティアや「生涯学習インストラクターバンク事業」のボランティア講師に対して、市民学習センターなどの拠点施設とのネットワークを活かしながら、人材養成・研修事業の充実を図ります。

・人材養成・研修の内容・手法については、市民の学習を支え促進するファシリテート研修、仲間どうしが相談することにより課題解決を図るピア・カウンセリング※ 研修なども実施し、多様な市民の意見・自主性を尊重しつつ全体の合意を作りあげるコーディネート能力の充実や、学習相談能力の充実を図ります。

(※ピア・カウンセリング(peercounseling)…自立生活、社会参画などの経験をもち、カウンセリング技術を身につけた当事者(障害のある人、闘病中の人など)が自らの体験に基づいて、同じ仲間(ピア)である他の当事者の相談に応じ、問題の解決能力を身につけるよう援助する活動。)

4)教育コミュニティ」支援

・人材養成・研修の専任担当職員を配置して、日常的に各小学校区を訪問・巡回して活動実態を把握し、各事業のコーディネーターや学校に対する情報提供や相談、「教育コミュニティ」で活用できる学習プログラムを提供するなど、地域社会での活動を支援します。

5)企画開発とネットワーク

・NPOや企業、高等教育機関などとの協働により、市民学習センター事業や「教育コミュニティ」づくりなどで活用できる新しい学習プログラムを開発します。

・大阪や関西の大学・大学院と連携し、大学の特性を活かした実践的・高度な学習プログラムによる専門セミナーを実施します。社会人向けの実践的な内容では「梅田大学院コンソーシアム」と協働実施している「インテリジェントアレー専門セミナー」※ などを、仕事帰りなどに参加しやすい時間帯で実施するほか、市民向けの高度な学習機会の提供についても、新たに検討を行います。

(※インテリジェントアレー専門セミナー…社会人大学院へ入学し、フルタイム院生として学ぶことやMBA(経営学修士)の取得などは時間的にも費用の点でも困難で敷居が高いが、一般的な大学開放講座や生涯学習施設の講座等では不十分と考えている社会人を対象に、ビジネス直結型の実践的な学習プログラムを、大学や大学院の集合体が、社会人が参加しやすい時間帯に、交通至便の場所で、スポット的に高度な専門セミナーの形で提供する試みが始まっている。大阪でも、関西大学や大阪工業大学、大阪経済大学、立命館大学など14大学や(社)関西経済連合会などで構成する「梅田大学院コンソーシアム(準備会)」が、総合生涯学習センター等で社会人対象に実践的なビジネスに関する講座を実施している。)

・さらに、大学コンソーシアム大阪の加盟大学で準備が進められている単位互換事業を積極的に支援し、あわせて大阪に関する各研究分野の最新の成果を、市民が学生とともに学ぶことのできる講座を総合生涯学習センターなどを会場にして実施するなど、市民向けの高度な学習機会の提供を行います。

・市民グループ・NPO、企業、大学と生涯学習関連施設のパートナーシップのもと、地域社会発展の基盤・舞台(「プラットフォーム」)を構成し、課題設定ごとに協働事業を開発・実施します。

(2)拠点施設:市民学習センター

 市民学習センターは、総合生涯学習センターを中核とする大阪市の生涯学習支援システムの一翼を担い、それぞれの近隣区を中心に市内全域を網羅して、小学校区を中心とする「教育コミュニティ」づくりを推進するため、次のような役割を果たします。

1)「教育コミュニティ」支援

・総合生涯学習センターなどとともに、日常的に施設周辺の行政区や小学校区と連携し、「小学校区」の学習活動への支援を行います。

・生涯学習ルーム事業を支えている生涯学習推進員をはじめ、生涯学習に携わる市民ボランティアに対する研修・助言・相談を行い、「小学校区」における市民の自主的な学習活動を支援します。

2)市民グループやNPOなどとのネットワーク事業の推進

・事業の企画や広報、部屋確保などの面での助言・支援をしながら、市民グループやNPOと協働したネットワーク化を行い、市民の主体的な学習を支援します。

・立地条件や専門的職員の持つ企画ノウハウ等を活かし、総合生涯学習センターや各部局と協働して、「ネットワーク型市民セミナー 拠点型」の企画開発・実施を担うことにより、市民の主体的な学習を支えます。

・大阪の魅力をさまざまな芸術作品の形で発信する市民を支援するなど、大阪の歴史・文化資源や自然環境・生活文化に気づき、活かすためのしくみづくりを進めます。

・大学・大学院などの高等教育機関と連携し、高度で多様な学習ニーズに対応する事業を実施します。

3)現代的・社会的課題についての学習機会の提供と情報提供・学習相談機能の充実

・市民の主体的な学習活動を支援するため、専門的職員が少子・高齢社会や健康、人権、子育て、教育、環境などの社会的課題に関する体験型・問題解決型の多様な学習機会の創出・提供を行います。

・ひとりでも多くの市民が生涯学習に関する興味・関心を高め、学習活動に参加できるようにするため、窓口や電話などでのさまざまな学習相談に対応できるよう、日常の情報収集・整理に努めます。

・地域社会で活動するグループ・団体の情報、講師情報、生涯学習に役立つ各種の情報源情報などを、個人情報保護に留意しつつ多様な手法により提供するとともに、市民の学習と活動を結び付けていくための相談機能を充実させます。

・市民の学習活動を支えるため、公的施設や民間の事業者、学習グループなどのチラシ・パンフレット、ポスターなどの収集・整理・配布・閲覧に努め、幅広い学習情報の提供を行うとともに、学習のきっかけづくりとなるような情報発信に努めます。

(3)子どもの「生きる力」を育む拠点施設:青少年教育施設

・青少年施設をネットワーク化することにより、各関連施設の役割・機能の明確化と連携の強化を図ります。とりわけ、青少年教育の視点から、中央青年センターおよび青少年会館、こども文化センター、青少年野外活動施設は、子どもの「生きる力」を育む拠点施設とし、地域社会における青少年教育の支援機能を高めていくよう取組みを進めます。

・中央青年センターは、「青少年の自立と社会参加を促進する学習支援」「青少年の自主活動とグループ活動の促進」など、青少年教育の中枢施設としての機能の充実を図ります。

・青少年会館では、「さまざまな課題を抱えた青少年とその保護者の支援」「子どもたちの多様な体験活動の推進」「青年の自立と社会参加の推進」「情報発信」「家庭・地域教育の推進ならびに地域の教育力」の向上などの事業充実を図ります。

・こども文化センターでは、「こども文化の振興・支援」「青少年指導者養成・派遣」「青少年の交流・発表支援」機能を充実します。

・青少年野外活動施設では、「自然体験学習」「生活体験学習」機能をもとに、さまざまな体験学習や協働体験学習を推進する機能を果たします。

(4)生涯学習を支える基盤施設:図書館、博物館施設

・図書館や博物館などの施設の専門的職員の経験や知識、資料・文化財・図書など、豊富な学習資源を活かし、情報提供機能や相談機能の充実を図り、市民やNPOなどの自主的な学習や取組みを支える基盤施設としての役割を果たします。

1)図書館

・蔵書冊数が150万冊を超える中央図書館では、高度で専門的な学習ニーズに対応できるよう、レファレンスサービス機能をより充実するとともに、図書館事業全般の企画立案機能を強化し、学校、生涯学習関連施設や機関、市民ボランティア等とのネットワーク化を進めます。

・また、産業創造館や市立大学学術情報総合センターなどの関係機関、商工会議所、企業等と連携し、多様なビジネス支援情報などの知的資源や専門相談等を市民が有効活用できるよう、図書館機能を活用した総合的なポータル(情報提供窓口)サービスやビジネス支援サービス等、市民ニーズに対応したサービスを進めます。

・1館あたり7万冊以上の蔵書を持つ地域図書館については、地域生涯学習推進の基盤施設、地域社会の情報拠点として環境整備し、情報提供・相談機能、ボランティアコーディネート機能、ネットワーク機能などの充実を図ります。

・図書館を中心として、学校、保育所や幼稚園、高齢者福祉施設などで絵本の読み語りやお話会(ストーリーテリング)、点訳絵本の製作など、地域社会で読書支援活動を行うボランティアやボランティアグループを養成するとともに、ステップアップ講座や情報交換の場の設定など、主体的に活動が広がるよう支援し、「教育コミュニティ」づくりに資する人材の育成を図ります。

・区レベルで、子どもの読書活動推進に関わる行政、関係機関、市民ボランティア等で構成する「子どもの読書活動推進連絡会(仮称)」を設置し、市民参加による推進体制を整備する中で、図書館は、地域社会の子どもの読書活動の相談・支援センターとしての役割を果たします。

・各図書館ごとに子どもの読書活動推進にかかわる重点事業計画を立て、蔵書の充実や読書の楽しさを体験する機会の拡充等に取り組みます。また、すべての図書館で定期的に乳幼児向けのプログラム実施に取り組むなど、乳幼児とその保護者に対するサービスを拡大します。

・学校図書館において、児童・生徒が調べ学習など主体的・意欲的な学習に取り組むことができるよう、市立図書館の資料を活用した学校図書館への支援体制を整備し、学校と図書館との円滑な連携を促進します。

2)博物館施設

・登録博物館や重要文化財の公開承認施設の指定を受けている大阪歴史博物館、美術館、東洋陶磁美術館、自然史博物館、科学館等の博物館施設が、幅広い専門分野の学芸員による調査・研究活動を基盤にして、大阪の歴史、美術、自然、科学技術等に関する専門資料・教材の収集・整理に努めるとともに、館蔵資料、展示や各種の設備を活かしながら多様な市民ニーズに対応できるよう整備します。

・総合生涯学習センター・市民学習センターをはじめとする生涯学習施設との連携を深め、共通テーマの企画展を計画的に開催するなどの手法により、それぞれの施設を回遊しながら、大阪の隠れた歴史や文化の再発見につながるネットワークの構築を図ります。

・施設の有する機能を活かし、市民やNPO等とも連携して、暮らす人、訪れる人が「まち」を回遊しながら地域社会の魅力を知り体験できる取組みを進め、人々が文化遺産にふれる機会を拡充します。

・大阪の歴史・文化資源や自然環境・生活文化などをテーマにした研究・発表を行ったり、大阪の魅力をさまざまな芸術作品の形で発信したりする市民やNPOの自主的な学習を支援するため、情報提供機能や相談機能の充実を図ります。また、ボランティアコーディネート機能を強化し、市民に開かれた市民参画型の施設づくりをめざします。

・教員や生涯学習関連施設職員などを対象に研修機会を創設するなど、学校や生涯学習関連施設に対する支援機能を強化します。


3  市民主体の生涯学習を支える専門的職員の能力の向上

(1)生涯学習関係専門的職員の役割

・社会教育主事については、社会教育法の市町村教育委員会の役割である「社会教育に必要な援助を行う」ため、「社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与える」と規定されている専門的職員です。

・司書については、図書館法で「図書館に置かれる専門的職員」と規定され、資料の収集、整理、提供および情報サービスその他の専門業務に従事する専門的職員であり、本市において「図書館サービスおよび運営全般の総括責任者」と位置づけられています。

・学芸員については、博物館法で「博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる」専門的職員と規定されています。

・これらの専門的職員は、市民一人ひとりが、日常的に直面するさまざまな課題解決に向けて、自分たちでものごとを決め、解決にあたるという「市民力」を身につけ、真の意味での市民参画(意思決定過程への関与)を図るために必要な事業を行うとともに、非営利性・平等性・地域網羅性・安定性など行政の特性を活かし、市民が歴史・芸術・文化・自然・科学、現代的・社会的課題をはじめ、幅広く学習することができる環境の整備を担うために、時代の変化に対応し、常にその能力の向上に努める必要があります。


(2)研修の体系化

・総合生涯学習センター・市民学習センターをはじめ、中央青年センター、青少年会館などの青少年教育施設、博物館・美術館などの博物館施設、図書館、キッズプラザ大阪などの目的別施設の職員を対象に、その能力向上のため研修体制を強化します。

・専門的職員に共通して、「生涯学習大阪計画」をはじめとする大阪市の生涯学習政策についての専門的知識や関連する施策や国、他の自治体の動向、市民の主体的な学習を支援するための学習プログラムの企画・運営やしくみづくりのための知識・技術、生涯学習事業や施設の総合的なマネジメント能力などをより向上させ、施策に反映できるような研修を行うとともに、職員自身の人権意識を高めます。

・さらに、社会教育主事・学芸員・司書などの職種別に、配置されている生涯学習施設・博物館・図書館の施設特性に応じ、必要な個別知識・技能に関する研修の実施が必要です。

・社会教育主事については、「生涯学習政策の目標設定と進行管理」「青少年・成人に対する基礎教育機会提供」「人権教育・啓発」「現代的・社会的課題に関する学習機会の提供」「主体的に社会参画する市民の養成・活動支援」「『教育コミュニティ』の育成・支援」「大阪市内部での生涯学習施策・事業間の連携・調整」などの領域に関する研修を行います。

・司書については、「図書館政策の目標設定と進行管理」「図書館及び図書館情報ネットワークシステムの管理運営の総括」「市民の必要課題に関する資料・情報の選定・収集・提供」「各種施設や学校との連携による地域社会の読書環境整備」「積極的な館外サービス展開による市内全域への公平な図書館サービス普及」「高度な調査相談・情報サービス」などの領域に関する研修を行います。

・学芸員については、「市民の財産となる資料・情報の選定・収集・広く市民を対象とした普及事業や保管と後世への継承」「各種施設や学校との連携による体験学習環境整備」「高度な調査相談・情報サービス」などの実現に必要な研修を行います。

・各区の生涯学習相談員や相談スタッフを対象に、ボランティアコーディネート研修など体系的な研修を実施することにより、多様な市民の意見・自主性を尊重しつつ全体の合意を作りあげるコーディネート機能の力量充実や、学習相談事業の充実を図ります。

・なお、「公の施設」の管理を代行する指定管理者(詳しくは次項を参照)に対しても、当該施設に配置する職員が身につけるべき知識・技術について習得・精通することを必須要件として求めるとともに、本市研修体系との連携を図ります。


4  生涯学習施設の管理運営のあり方

・今後の生涯学習施策の推進にあたっては、NPO、高等教育機関、企業などの多様な担い手との協働が必要です。「公の施設」である生涯学習施設の管理運営についても、行政と他の担い手が果たす役割について、適切な役割分担が求められています。

・「公の施設」とは、地方自治法第244条で、公立学校、幼稚園、保育所、コミュニティセンター、公民館、図書館、博物館、市民会館、文化施設、体育館、プール、公園、病院等、地方公共団体が設置する「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」と規定されている施設です。

・これらの施設の管理運営主体については、これまで各地方公共団体の直営か、地方公共団体が出資している法人(文化振興財団、スポーツ振興財団等)もしくは公共的団体(農業協同組合、自治会等)に制限されていましたが、平成15年(2003年)9月に地方自治法の一部改正が施行されたことにより、民間企業やNPOなどの団体が、「市民の平等利用の確保」「施設効用の最大化」「管理経費の縮減」「管理を安定的に行う物的、人的能力の保有」の条件を満たしていれば、議会の議決を経て、公の施設の管理を代行することができるという「指定管理者制度」が制定されました。

・こうした改正の背景・理由としては、「市民のニーズが多様化し、これに効果的、効率的に対応するためには、民間事業者のノウハウを広く活用することが有効である」「公的主体以外の民間主体においても十分なサービスの提供能力が認められるものが増加している」こと等があげられています。

・生涯学習施設についても、「公の施設」として、当該施設の設置目的や利用実態、具体的な事業の方向性などをふまえ、公平性・有効性・経済性・安定性の確保や市民サービス向上など総合的な観点から検討する必要があります。

・指定管理者制度を適用する場合は、「管理経費の縮減」を図りつつも、単に経済性・効率性のみを追求するのではなく、継続性・中立性・平等性や施設の設置目的にあった事業の効果的な遂行能力などの点もふまえ、施設の管理者として最も適当な事業者を、透明で客観的な審査を行ったうえで選定し、市民に対して質の高いサービスを継続して提供することをめざします。

・また、博物館施設については、国の動向もみながら、地方独立行政法人化など、そのあり方を検討する必要があります。

・生涯学習施設は市民共有の財産であり、「市民力」を育むとともに、市民生活をより豊かにするための、「まなび」を基本とした「コミュニティ」づくりや「大阪の歴史・文化・自然環境を活かした『まなび』のネットワーク」の拠点として、最大限に活かしていくことが必要です。


5  「まなび」の成果の評価と活用

・学習成果や施策の推進状況について評価を行い、「まなび」と「行動」の循環を通して、市民主体の「自律と協働の社会」づくりを進めます。

(1)各施策・事業の評価と活用

・本計画において各施策・事業を所管する各部局(施設)において、主体的な自己評価を行い、目的に応じたよりよい施策展開に努めます。

・大阪市生涯学習推進会議では、本計画の施策体系に沿って、複数の関連施策・事業を一体的に評価する観点を持ちながら、計画全体の進捗状況の確認を行います。

・また、大阪市生涯学習推進会議並びに事務局体制の充実を図り、関係部局により構成するテーマ別部会(「教育コミュニティ」「歴史・文化」など)を設置して、施策体系に沿った評価をもとにした、新しい施策の検討や調整を行うなどにより、全市的な政策立案と進行管理機能の強化を図ります。


(1)評価の必要性と基本的な考え方

・我が国において、生涯学習施策をはじめとする教育や文化の領域に関する評価については、近年、図書館・公民館・博物館のいずれについても、「設置および運営上の望ましい基準」により自己点検や評価の努力義務が課されてきています。現在、適切な評価指標や、広範な対象にわたる長期間の効果測定など、総合的な観点からの評価の進め方について、検討が進められています。

・なお、大阪市においては、全庁的に事業評価システムが導入されていますが、まず、このシステムを十分に活用するため、客観的な判断がしやすい項目を盛り込むよう努めるとともに、数値等による定量的な指標をできるだけ用いるなど、よりわかりやすいデータとしてまとめるよう留意する必要があります。

・なお、生涯学習施策の評価をさらに深めるためには、組織内部での自己評価に加え、アンケートや聞き取り調査、統計分析、他の類似施設との比較など、さまざまな手法を用いることも検討する必要があります。

(2)評価の観点

・評価にあたっては、次の観点に立って、長期的な分析も含め、総合的な評価を行う必要があります。

A)評価はそれ自体が目的ではなく、PDCAサイクル※ に沿って施策・事業をよりよくするために必要な段階の一つであり、どの程度目的を達成したのか、目的達成が困難な原因は何なのかを明らかにしたうえで、よりよい施策・事業へと改善充実を図ろうとしているか。

(※PDCAサイクル…施策・事業に必要な要素であるPlan(企画)、Do(運営)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったもの。企画から改善までを一貫した流れのものとしてとらえ、さらにそれらを循環させることで、以降の事業・計画の改善に結びつけようとする考え方。)


B)日常的に展開している事業について、社会教育法や施設設置条例などをもとに、社会状況の変化や市民ニーズに留意しながら、施策の方向性や施設の設置目的などについて、関係職員・指導者全員の間で、常に共通認識を図るようにしているか。

C)評価結果について、わかりやすく客観的なデータを作成し公表することにより、庁内関係機関はもとより市民に対し、各施策・事業の必要性・有用性について説明責任を果たし、理解を得ようとしているか。

D)比較的測定しやすい短期的な「結果」※ だけではなく、長期的・広範にわたる「成果」※ についての評価に努めているか。

(※結果(アウトプットout-put)…実施サービスの規模や回数など、行政活動の量や実績。

※成果(アウトカム out-come)…施策や事業を行った結果により、地域社会や市民に及ぼした社会的な効果や影響。 )


(3)施策・事業の計画・運営と評価の流れ

・企画、運営、評価、改善を、一連の流れとしてとらえ、評価した結果に反映させることにより、よりよい施策・事業の企画・運営をめざします。

企画
・運営
◇設置目的や実施
 目的の明確化
◇施策
・事業の企画
・実施
◇施設の管理
・運営
◇ 評価
・評価データの分析
・整理
・問題点
・課題の抽出
・分析
・改善策の検討
◇改善策の
検討・実施
評価の
プロセス
◇評価方法の検討
・評価指標の設定
・評価項目の検討
◇評価データの収集
・アンケート調査
・聞き取り調査
・内部ヒアリング
・経営
・運営データ
  など

(4)評価の実施方法

・施策・事業ごとに、「目的の達成度」「管理・運営状況」「派生的な効果」などについての評価指標を定め、それぞれに具体的な評価項目を設定します。

・評価項目については、「利用者に直接関わるサービスの提供」「施設・設備の維持・管理」「効率的・効果的な経営に向けた経費縮減策などの工夫」「利用者の学習サイクルや日常生活への影響」「非来館者を含めた地域社会一般への影響・貢献」などといった観点から、施策の目的・規模・性質等に応じて、個別に設定する必要があります。

・なお、客観的な判断がしやすいよう、数値等による定量的評価※ を用いることを基本とし、市民の意見等にもとづいた定性的評価※ をあわせて行うこととします。

(※定量的評価…測定結果について、実数や割合、率など数値化して示す評価方法。定性的評価…測定しようとするものの状態や現象等を観察したり、関連する要素を組み合わせたりするなどして、変化や原因を示す評価方法。  なお、具体的には、「拠点施設で独自に開発したモデル事業が、関連施設・団体にどれだけ普及し、自主事業の数や内容に広がりが出たか」「事業の運営に関わったボランティアの数」「生涯学習事業に初めて参加した人の数や率」「生涯学習インストラクターバンク等の登録更新率」などが考えられる。)

(2)学習成果の評価と活用

・学習者一人ひとりにとって、自分の学習が適切であったかどうかを判断し、学習した成果を評価することは、より適切な学習方法や形態を選択して学習しなおしたり、新たな問題に気づいてさらに学習を進めること、学んだ成果を地域社会に活かすことにつながります。

・生涯学習の目的や内容・方法はきわめて多様であり、これに関する評価のあり方についても、学習者の希望や内容に応じて、多様で多元的なものでなければなりません。

・各施策・事業の実施にあたっては、市民一人ひとりの学んだ知識・技術等が「社会への参加」「まちづくり」に結びつくよう意識して企画・立案し、評価を行ったうえで、より適切な手法や形態の選択、新たな課題・テーマの設定、ネットワークの拡大・深化など、目的達成に向けたさらなる改善、充実と計画的な推進を図ります。


6 計画のさらなる推進

私たちは、現在、少子・高齢社会や人口減少社会といった、かつて経験したことのない社会の変化に直面しており、新しい時代に柔軟に、かつ的確に対応しながら、持続可能な社会をつくることが求められています。

 生涯学習が必要とされてきた背景には、社会の変化によって直面する新たな課題をひとりの市民が解決できる、いつでもどこでもだれでもが学べる学習社会づくりをめざすという考え方がありますが、今の時代ほど、社会の変化に対応するための知識や技術、能力といった、新しい社会を切り拓くことのできる「市民力」を培うため、生涯学習が必要とされている時代はありません。

 大阪市には、古くから培われてきた市民主体のまちづくりの伝統や豊かな地域文化といった大阪の歴史・文化を礎とした、「小学校区」から「区域」、「広域」に至る、さまざまな分野で活躍する人材、そして、生涯学習関連施設、NPO、民間教育事業者などが提供する学習や活動の機会といった豊富な学習資源が存在しています。

 生涯学習大阪計画の推進を通して、これらの学習資源と一人ひとりの市民を結びつけ、「まなび」と「行動」が循環する生涯学習社会をつくるとともに、私たちが社会の主人公として、自らの意思と責任において、地域社会やNPO、企業、行政などとお互いに信頼関係のうえに立って協働しながら、さまざまな課題を乗り越えていく「自律と協働の生涯学習社会」の実現をめざします。


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