生涯学習大阪計画 ~自律と協働の生涯学習社会を目指して~

はじめに 第1章 第2章 第3章 第5章

第 4章 施策体系   ~大阪の生涯学習のこれから~   《施 策の体系》


1 「市民力」を育む生涯学習社会づくり

・市民主体の生涯学習社会づくりのために、学習と活動を結び付けるなど、市民一人ひとりが、日常的に直面するさまざまな課題解決に向けて、自分たちでものごとを決め、ともに解決に当たるという「市民力」を身につけることにより、さまざまな分野で市民参画(意思決定過程への関与)を図るというしくみづくりを進めることが必要です。そこで、市民の主体的な学習を支えるため、現代的・社会的課題に関する学習機会の創出に向けて、「ネットワーク型市民セミナー」等を実施するとともに、地域活動やNPO活動などへの参画について、幅広く相談に応じられる体制を構築し、学習から活動へと結び付けるための支援を行います。

・大阪市では、自らの持つ経験や能力を活かし、コーディネーターや講師として活躍しようとする市民を対象とした人材養成・研修事業を行っています。このような、市民が市民の「まなび」を支え励ます取組みを今後も拡充し定着を図ります。

・急激な社会変化のもとで、少子・高齢社会への対応をはじめ、男女共同参画社会の実現、同和問題や外国籍住民をめぐるさまざまな人権問題の解消など、市民一人ひとりの理解のもとに具体的な行動を必要とする課題は引き続き存在しており、幼児期から高齢期に至るそれぞれのライフステージにおける多様な教育活動を通じて、人権尊重の意識を高める取組みを進めます。

・これからの社会においては、学校を卒業した後も直面する課題に対応するために学ぶ力、自分の人生を設計する力、コミュニケーション能力などが必要であり、体験型学習、問題発見・解決型の学習の推進を通して、市民一人ひとりに求められる力の醸成を促します。

・また、すべての市民が継続的に学習し、自己実現やさまざまな課題解決につなげられるよう、引き続き、身近な生涯学習関連施設や専門機関等における各種の学習機会の充実を図るとともに、基礎的・入門的な内容から、地域課題やより専門的・高度な学習内容まで、多様なニーズに応えられるよう、新しい学習プログラムの開発や、市民参加型の取組みなどを、NPOや企業、大学等の高等教育機関などと生涯学習関連施設との協働により促進します。

(1)学習プログラムや情報の提供・相談、人材養成機能の充実

1)現代的・社会的課題に関する学習プログラムの提供
ア)「ネットワーク型市民セミナー」の実施
・大阪市では、「前計画」のもと生涯学習施設を整備し、市民にさまざまな学習機会を提供してきました。また、本市の行政課題や市民にとって必要なさまざまな課題については、各部局がセミナーや広報誌等を活用して市民に説明し、ともに考える努力を行ってきました。「ネットワーク型市民セミナー」とは、これらを結び付け、総合生涯学習センター・市民学習センターなどと協働して、だれにでもわかりやすい形でさまざまな学習機会を一元的に提供することにより、市民の主体的な学習を支え、大阪市の有する情報やノウハウ、施設・人材などの資源をより効果的・効率的に活用することをめざすものです。

・「ネットワーク型市民セミナー」は、「拠点型」「出前講座型」の2つの形式により実施します。「拠点型」は、本市主催により、総合生涯学習センター・市民学習センター等を活用して、国・大阪府等の関係機関などと協働してプログラムを企画開発・運営します。「出前講座型」は、本市の各部局・事業所等が、基本的な内容を予め設定し、市民の要請に応じて各区や小学校区などに出向いて実施します。

<「ネットワーク型市民セミナー 拠点型」>
・各部局や国や大阪府などが実施する事業に対して、総合生涯学習センター・市民学習センターが、その立地の利便性、広報や事業の企画ノウハウ等を持つ専門的職員の配置等の条件を活かし、支援し、協働して事業を実施できるよう、全庁的に課題やテーマの募集を行います。総合生涯学習センター等が、応募した各部局や機関とともに、実施時期や内容などについて、「拠点型」プログラムの企画を行います。実施にあたっては、セミナー会場の確保や広報、事前の準備及び当日の運営など、全般にわたり協働・支援しながら事業効果を高めます。


<「ネットワーク型市民セミナー 出前講座型」>
・防災研修、健康相談など、現在、各部局・事業所等が各区や小学校区などに出向いて、市民向けに実施している事業については、市民の要請に応じて随時実施可能な形をめざして「出前講座型」として実施します。また、この「出前講座型」の利用を促進するため、申込みや利用条件を簡単に閲覧できる冊子やホームページ等の整備を行うとともに、生涯学習ルーム事業や市民学習センター等での周知に努めます。

・例えば、年金、税金、教育、健康、福祉などの分野に関する総括的な説明など、従来は主に個別相談という形で市民向けに提供されていた情報についても、市民のニーズや地域社会のニーズをもとに、各部局・事業所の職員自身が提供・説明できる内容について、各部局と連携して、「出前講座型」のメニューの充実に努めます。


イ)多様な学習プログラムの提供

・「ネットワーク型市民セミナー」以外にも、市民学習センターで実施してきたセミナー事業を引き続き活用し、現代的・社会的な課題全般について学習する機会として、多様な方法により実施します。

・また、いつでも、どこでも、だれでもが学習・活動に参加できるよう、引き続き、あらゆる年齢層を対象に、子育て・人権・環境などの現代的・社会的課題をはじめとする、多様な学習ニーズに応えられる内容と、対象や地域社会の実情に見合った時間・場所の設定など、きめ細かな学習機会の提供とコーディネートに努めます。

・生涯学習の意義・必要性や、学習活動の企画・運営上のポイントなど、自主的に学習を進めるために必要な知識・技術を、学習指導者用資料・教材として、冊子やビデオ等の形式にわかりやすくまとめ配布・提供します。特に、「市民力」の要素となる「自尊感情」※ やエンパワメント、「さわやかな自己主張」※ 、情報リテラシー※ など、学習者自身の価値観・意識の変化や、コミュニケーション能力の向上に役立つものとなるよう、内容の充実に努めます。

(※ 「自尊感情」(セルフエスティーム)...自分自身をかけがえのない存在とする自己肯定感情のこと。自らを否定的にとらえるのではなく欠点も含めて受け入れ、自分自身を好きになることは、他の人の尊厳を認める人権意識の土台となることから、人権教育において自尊感情を育てることが重視されている。

※「さわやかな自己主張」(アサーティブネス)...自分を押さえ込まず、逆に相手に攻撃的にならずに、的確に自己主張するための人間関係の考え方や話し方、接し方などの方法。

※情報リテラシー...コンピュータの操作だけでなく、インターネットなどを使って、氾濫する情報の中から必要な情報を理解し、選択・整理・創造・発信できる能力のこと。)

2)情報の提供・相談機能の充実

・市民の主体的な学習が活動と結びつくよう、講師やグループの情報、相談窓口に関する情報などを多様な手法により提供します。

・相談者の学習を深めその活動を幅広く支援できるよう、学習相談体制の充実を図ります。区役所の生涯学習担当職員、生涯学習相談員の情報交換を密にするとともに、学習カウンセリング技術、レファレンス技術等を導入し、相談事例についての分析や市民ニーズの把握に努め、有効かつ効率的な相談体制を構築します。

・地域社会や各区における生涯学習資源(専門機関・施設、人材、団体・サークル、地域社会の歴史・文化などの情報)について、総合生涯学習センターや市民学習センターと各区とのネットワークを強化し、市民一人ひとりが必要とする情報にアクセスしやすいようなしくみづくりを進めます。また、「生涯学習情報提供システム」や「図書館情報ネットワークシステム」を充実し、市民や地域社会に対する、より効果的な情報発信ができるよう努めます。

・「生涯学習情報提供システム」については、システム内だけでなくリンク先サイトにも検索範囲を拡大して、分野別情報を横断的に検索できるよう改善します。

・図書館においては、迅速な情報探索・収集の手がかりとなるテーマごとの「みちしるべ」(パスファインダー)を作成するなど、多様化・高度化する市民ニーズに対応した情報提供の拡充を図ります。

・障害のある人・外国籍住民等の学習情報へのアクセスを容易にするため、点字・音声資料、手を触れることができる資料(布の絵本、さわる絵本など)、映像資料、外国語資料等を閲覧できる方法・場所などの情報収集に努めます。

・区においては、広報紙など各種媒体を活用して生涯学習情報の提供・充実に努めるとともに、区民センター等の生涯学習関連施設では、グループでの打合せや作業など日常的な活動がしやすいよう環境整備を図り、相互交流・情報交換を促進します。

・地域図書館では、地域社会の情報拠点化事業として、相談体制の充実を図るとともに、資料を探すための手がかりとなる資料や多様なテーマごとの図書リストを作成し、ホームページで公開するなど、区域における総合的な情報提供機能を拡充します。

・施設に出向いて学習することが難しい市民の学習を支援するため、市民学習センター等の生涯学習施設で実施された講座・イベントの中から、インターネット上で閲覧できるものを提供するなど、時間や場所に制約されない学習環境の整備に努めます。同時に、生涯学習関連施設をはじめ生涯学習に関わる担当者が、事業を実施する際の参考事例として活用し、事業のいっそうの充実を図ります。




3)人材養成機能の充実

・人権、福祉や防災、環境などのさまざまな地域社会での取組みを総合的につなぐ調整役として、さまざまな意見を調整し、対話を促していく能力をもつ人材(ファシリテーター ※ )が求められています。

(※ファシリテーター...プログラムを進行するにあたり、もともと立てておいた計画に沿って進行していくことよりも、参加者がプログラムに参加するなかで他の参加者とともに考えて気づくことを重視し、そのための環境を整え、考えや気づきがより深まりやすくなるよう促す役割を果たす人。当事者自身の話し合いにより課題解決を図るよう促すことに重点がおかれる。)

・生涯学習推進員をはじめ「はぐくみネット」コーディネーターなど地域社会で生涯学習を支える人材を対象に、人権意識の向上を図るとともに、コーディネーターやファシリテーターとしての資質向上のための養成・研修事業を充実します。

・PTAをはじめとする社会教育関係団体や社会福祉団体等の指導者、スポーツ指導者、青少年活動リーダー、人権啓発推進員をはじめとする各局事業と関わりの深い地域社会の指導者については、学習活動推進の核となる人材として、引き続き体系的な養成・研修に取り組むとともに、その活動を支援します。

・従来、各施設・機関で進めてきた、保育、青少年育成指導、図書館、博物館施設ガイド、スポーツ、情報・相談など、さまざまな分野のボランティア養成事業については、市民の「まなび」を支える人材養成という観点に立って、引き続き積極的に実施します。

・市民ボランティア講師を登録し、学習グループに紹介する「生涯学習インストラクターバンク事業」※ をさらに充実させるとともに、学校教育で活動するボランティアを登録する「学校支援人材バンク」との連携を図ります。

(※生涯学習インストラクターバンク事業...仕事や趣味で培った優れた知識・技術・経験を持ち、ボランティア活動に意欲を持った人を公募し、選考・研修の後登録し、市民の団体やグループ・サークルの要請に応じて紹介している事業。平成6年度(1994年度)から実施。)

(2)人権課題と生涯学習

・だれもが個人として等しく尊重され、自らの人生を自ら創造できる社会を実現することを基本理念に、さまざまな人権問題について、生涯学習と人権教育の「まなび」のネットワークづくりを進め、人間尊重の生涯学習のまちづくりを推進することが重要です。

1)学習情報の総合的提供

・人権に関する学習機会・学習教材などの情報を市民に広く提供するため、「生涯学習情報提供システム」をいっそう充実させ、学習情報を総合的に市民に提供していく取組みを進めます。特に総合生涯学習センターは、本市生涯学習の中核施設として、人権教育にかかる情報収集、学習相談の中心的な役割を果たします。

・また、人権学習情報を収集し、体系的に市民に提供していく取組みとして、各施設で行っている人権啓発講座、イベント情報、最新の人権情報を総合的に提供できる方策を検討します。

・さらに、障害のある人をはじめだれもが講座やイベントに参加しやすくなるよう、学習情報を提供する際には、手話通訳や要約筆記、一時保育などの環境整備の状況についてもあわせて広報します。

・外国籍住民に対しても学習情報が広く提供できるよう、多言語対応による広報を行うとともに、NPOや地域コミュニティとの連携により地域社会の身近な情報交換・交流を進めます。

2)学習の場・機会の充実

・人権の意義や人権尊重の必要性については、普遍的な視点、多様なアイデンティティを互いに尊重しあう力を身につける国際理解教育にかかる視点、生活に根付いた人権意識を育てるための地域課題を含めた視点などから多様な学習機会を提供します。

・人権課題に関する学習事業の実施にあたっては、市民の理解と認識をさらに深められるよう、身近で具体的な生活と結び付いたテーマ設定に努めるとともに、映画や演劇、コンサート、パネル展等のイベントなど多様な手法を活用して、関係部局・施設相互が連携して多彩な展開を図ります。

・総合生涯学習センター、市民学習センター、人権文化センター、男女共同参画センター(クレオ大阪)、中央青年センター、青少年会館など、市民に身近な親しみやすい場所において人権課題に関する講座等を開催し、だれもが参加しやすい学習の場と機会を提供します。

・また、生涯学習やスポーツ、文化活動に関する施設が、高齢者や障害のある人などにとって利用しやすいものとなるよう、バリアフリー※やユニバーサルデザイン※ の視点も取り入れ、整備に取り組むとともに、個性を活かして気軽に取り組めるスポーツ活動や芸術・文化活動、学習活動などの普及を図ります。

(※バリアフリー...高齢者や障害のある人などが社会生活をしていくうえで障壁(バリア)となるものを除去すること。歩道の段差などの物理的障壁だけでなく、社会的、制度的、心理的なすべての障壁を除去する意味で用いる。

※ユニバーサルデザイン...障害の有無、年齢、性別などにかかわらず、すべての人が利用しやすい都市や生活環境をデザインする考え方。バリアフリーが障壁を除去することであるのに対し、最初から障壁をつくらないという発想に立っている。)

・事業やイベントを実施する際には、一時保育の実施、手話通訳や要約筆記、また資料を文字量の少ないわかりやすいものにしたり点字化するなど、だれもが参加しやすい環境整備に努めます。

・平成15年(2003年)からの10年間が「国連識字10年」となっていることをふまえ、「大阪市識字施策推進指針」に沿って進めてきた識字・日本語施策の充実を図るとともに、識字学級のこれまでの実践・成果を活かし、外国籍住民の多い区を中心にした地域識字・日本語交流教室の開設や、外国籍住民の日本文化の理解に資する学習機会の提供など、多文化共生社会の実現に向けた取組みの充実に努めます。

・具体的には、同和問題、外国籍住民や障害のある人をめぐる問題、高齢者・子どもをめぐる問題、男女共同参画に関わる問題、HIV感染者やハンセン病回復者等の人権問題、高度情報通信社会の進展にともなうプライバシー保護の問題など、解決に向けて取り組むべきさまざまな人権問題についての学習機会を提供します。

3)地域社会における人権教育・啓発の推進

・同じ地域社会に暮らす外国籍住民や障害のある人、高齢者等との交流と相互理解を深め、共生していくことをめざす必要があります。

・地域社会における人権教育・啓発の推進を図るためには、市民一人ひとりが、直面する課題に対応するための学ぶ力(自己教育力)や、社会の多様な情報を収集処理し活用する力(情報活用能力)、就労意識を身につけて自分の人生を設計する力(キャリアプランニング能力)、互いの意見を尊重しさわやかに自己主張する力(アサーティブネス)を身につけ、体験型、問題発見・解決型の学習を推進するとともに、課題に対してともに相談し解決にあたる「市民力」を育むことが必要です。

・地域社会には、市民団体やNPOなど豊富な人材と組織、また、教育・福祉にかかわるネットワーク等が存在しており、これらの取組みとの連携を進めるとともに、日常生活の中であらゆる機会をとらえ、それぞれが持つ力を活かし、活躍する場を提供するため、区におけるPTAや子ども会などの生涯学習推進団体や各種市民団体、関係機関等との連携を強化し、人権課題や情報の共有化、事業の共催など効果的な啓発のいっそうの推進に努めます。

・今後とも、PTA人権啓発活動指導者養成講座の開催や、PTAをはじめとする社会教育関係団体における人権研修会等の支援を行い、人権教育のための人材の養成に取り組みます。

・生涯学習推進員が、生涯学習ルーム事業などの企画実施において、人権啓発推進員等と連携しながら、人権教育の視点をふまえて市民が参加しやすい事業づくりを進められるよう、研修を充実します。

・人権啓発推進員については、市民により近い立場で情報を分析し、人権学習を支援し助言するリーダーとして、また人権啓発活動に関わる事業・情報・人材を結び付けるコーディネーターとして、その役割を強化し、他の社会教育関係団体とも連携して、人権教育・啓発の取組みを進めていきます。

・また、人権教育・啓発の推進や市民の相互交流の役割を担う人権文化センターをはじめ、男女共同参画センター(クレオ大阪)、市民学習センターなどのさまざまな施設を活用して人権教育・啓発の充実に取り組みます。

(3)青少年の「生きる力」の育成

1)青少年の基礎教育の充実

・青少年がアイデンティティを確立し、「自尊感情」を高め、表現する力・コミュニケーション能力を身につけるとともに、思考力・判断力を養い、さまざまな問題を解決し、自分の人生・将来を設計し、自分の人生を切り開けるような基礎教育力を身につけるための学習を支援します。

・すべての教育の出発点である乳幼児期から、学齢期(6歳~15歳)及び後期中等教育期間(16歳~18歳)にわたって、子どもたちが成長や発達状況に応じて、基礎教育力を身につけ、「生きる力」を培えるよう、小学校区の「教育コミュニティ」づくりや地域社会の子育てグループなどと連携した家庭教育の支援などを通して、「地域の教育力」の向上に努めます。

・小学校区での「はぐくみネット」を中心とする「教育コミュニティ」づくりを軸に、地域社会や産業界等と学校教育との連携を進め、さまざまな知識や技能を有する社会人による授業支援や、博物館等の施設を活用して校外で実施する体験的な教育活動、職業観・勤労観の育成をめざすキャリア教育※ など、体験型学習、問題発見・解決型の学習を推進し、子どもとおとなの豊かな出会いから「生きる力」を育みます。



(※キャリア教育...平成11年(1999年)の中央教育審議会答申の中で、望ましい勤労観・職業観及び職業に関する知識や技能を身につけさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育とされている。)

・乳幼児期においては、保健福祉センター等で行う子育て関連事業と図書館が連携し、絵本を媒介とした親子のふれあいを深めるとともに、図書館と保育所、幼稚園が連携して実施している幼児期読書環境整備事業について、さらに対象施設の拡充を図り、読書環境が豊かなものとなるよう努めます。また、地域図書館と市民グループとの連携により、地域社会における読み語り活動や子育て活動の活性化を図ります。

・また、市立図書館における学校図書館への支援体制を整備し、学校における調べ学習が円滑に行われるよう、資料の効果的な利用を促進します。

・学校教育のなかで、図書館の持つ資料・情報を使いこなすためには、司書教諭や学校図書館主任と図書館司書との交流を深め、図書館と学校との連絡・調整を円滑に行う必要があります。豊富な図書館資料を有効に使ったり、おはなし会の実施等読書普及活動が活発に行えるよう、学校への連携・支援を深めます。

・本離れ、活字離れが進む中学生・高校生に対しては、地域図書館で「ヤング・コーナー」を設置し、「居場所づくり」を行うほか、夏季休業期間等には、中学生・高校生向けの図書の展示、リスト配布を行うなどの働きかけを行っていますが、さらに、興味・関心が高い分野にかかわる資料提供の充実や多様な催しの開催、ボランティア活動の機会の提供など、より積極的な働きかけに努めます。

・青少年が自立と社会参加に向かうステップとして、中央青年センターをはじめとする施設において、さまざまな自主活動やグループ活動が体験できるよう支援します。また、青少年の相互交流の活性化を図るため、青少年会館など身近なところで、日常生活と密着した気軽に集える場の充実に努めます。

・気軽にスポーツ・レクリエーション活動に参加でき、活動を通じてコミュニケーションを図り、仲間づくりが促進されるよう、機会の提供に努めます。また、芸術文化を育み、創造できるよう、鑑賞・創作・発表といったさまざまな形で文化に親しめる機会の拡充に取り組みます。

・自然とふれあい、主体的な共同生活の中でさまざまな体験学習を行い、豊かな感受性と人間性、コミュニケーション能力、協働する能力、創造的な生活態度などを学んで「生きる力」を培えるよう「野外活動」の普及振興に努め、自然の中での活動を通して、自然のすばらしさや人間関係づくりを学べるような体験プログラム等の開発・充実を図ります。

2)課題を抱える子どもの「生きる力」の育成

・すべての子どもは、国籍や性別、障害の有無、環境に関わらず、権利の主体として最大限に尊重される必要があり、社会的・経済的に不利な立場にある子どもたちの「生きる力」を育成することが重要です。

・不登校、ひきこもり、ニートなど、課題を抱える青少年、また、障害のある青少年が、現代社会を主体的に生きるための基礎的な力を身につけ、社会参画、職業的自立等を図ることができるよう、中央青年センター、青少年会館などで「自分発見」や職業観の育成の学習機会の提供などに努めます。また、課題を抱えた青少年とその保護者を対象とし、教育相談窓口の開設と安心できる「居場所」を提供する「ほっとスペース事業」の全市展開に向け検討を進めます。

・子どもに関わる問題には、さまざまな要因が複雑に絡み合っている場合が多く、その予防や解決のために、教育相談窓口をもつ青少年会館をはじめ、中央青年センター等の生涯学習施設や、子育て相談窓口をもつ医療・福祉機関と、学校とが密接な連携を図り、取組みを協働して進めます。

・図書館では、障害のある子どもが、さわる絵本、布の絵本、点訳絵本などを通じて読書の楽しさを体験することができるよう、また、視覚に障害のある保護者が子どもと絵本を楽しめるよう、点訳絵本の収集・提供に努めます。また、IT技術の発達により注目されているデジタルコンテンツ(デイジー資料)※ などを活用した読書支援に積極的に取り組みます。さらに、さわる絵本、布の絵本等の製作にかかわるボランティアグループとの連携や、図書館見学会などを通して、養護教育諸学校との情報交換などに積極的に取り組み、発達段階に応じた読書相談や読書支援に努めます。また、外国語を母語とする子どもの文化的アイデンティティ※ を尊重し、母語に親しめるよう、図書を収集・提供し、母語や母文化の学習機会の拡充に努めます。また、入院中の子どもの読書環境が豊かなものとなるよう、病院や学校と情報交換するなど、連携・協力を図ります。

(※デジタルコンテンツ(デイジー資料)...デイジーとは、Digital Accessible Information System の略称で、録音資料製作の国際標準として開発された録音形式。デジタル形式のため様々な媒体に記録できるが、主にCD-ROMにより提供されている。耐久性、収納性、検索性に優れるが、専用の再生機やパソコン用再生ソフトウェアが必要。ひとつのメディアにデイジー形式の音声データとテキストデータ、イメージ情報(画像や動画)を同期させることができ、マルチメディアデイジーとして視覚障害以外の障害のある人に対しても有用である。

※文化的アイデンティティ...ことばや生活習慣、宗教、伝統芸能など、自分がどのような文化をもつ集団に属しているのかという帰属意識。自分や家族が属する集団は、どのような独自文化をもっていて、今までにその文化をとりまくどういう背景があるのか、その文化的背景のなかで自分は今後どのように生きていこうと努めるのかといった「自分」についての認識を明確にもつこと。)

(4)NPO、高等教育機関、企業との連携

1)市民グループ・NPOとのネットワーク

・モデル事業などの先進的な取組みを行おうとする市民グループ・NPOから研究・事業企画を公募し、大阪市の生涯学習関連施設が経費・会場提供・広報などの面で支援する「生涯学習ネットワーク事業」を拡充し、NPOの先進性や多様性を活かした事業を実施します。

・市民学習センターでは、市民グループや身近な地域社会で活躍するNPO等の情報提供や、「教育コミュニティ」の活動を支える講座・イベントなどを実施するとともに、新しい学習プログラムの開発を行うなど、「市民力」の形成を図ります。

2)高等教育機関や地域企業(工場や商店等)等との連携

・社会人大学院で学ぶことは時間的・費用的に困難なものの、一般的な大学開放講座等では内容的に不十分とする社会人を対象に、大学や大学院の連合体(大学コンソーシアム)と連携して、社会人が参加しやすい時間帯に、交通至便の場所で、ビジネス直結型の実践的かつ高度な学習プログラムによる専門セミナーを実施します。

・近年、都心にサテライトキャンパスを置く大学・大学院が増えてきている状況をふまえ、単位互換や情報交換のために、大阪市内や関西の大学でつくられた連合体等と連携して、市民に大阪の歴史や文化などをテーマとする高度な学習機会の提供を図るとともに、大学間での単位互換などを促進するしくみづくりを協働して進めるなど、大学の有する資源を活かした事業展開についても検討を進めます。

・地域社会の多様な立場の人や組織(市民グループ・NPO、大学、企業、本市生涯学習関連施設など)が、自由に集まり、地域社会の課題(まちづくりや環境、青少年教育、子育て、福祉など)について相互に情報交換や交流をし、解決に向けて連携・協働する場(「プラットフォーム」)づくりをめざします。

・「プラットフォーム」では、例えば、大学の調査研究のフィールドを地域社会や行政が提供して、その調査研究成果を活かして地域社会が抱える問題の解決に結びつく事業を推進したり、企業の社会貢献活動(企業から地域活動への専門家の派遣や必要な機材の提供、助成金の提供など)に地域社会が積極的に協力することにより、企業と地域社会の結びつきを強化したり、あるいは学生のインターンシップや児童・生徒の職場体験学習の場を地域社会や企業・行政が提供し、学生の職業観・社会観の育成に役立てるなど、プラットフォームに参加する組織間の連携・協働事業を実施します。

・市立図書館が中心になって、産業創造館等の関係機関や企業と連携し、ビジネス支援情報・専門相談などについての総合的なポータルサービス※ を実施します。


(※ポータルサービス...利用者が、関連する情報網・サービス群のなかから、必要とするものを探し出しやすいよう、窓口を一つに集約するとともに、関連する機関との日常的な連携体制を整備することで、サービス全体の利便性を高めること。)

(5)さまざまな学習機会の提供

 高度化・多様化する市民の学習ニーズに対して、さまざまな学習機会の提供が必要です。教育委員会のみならず、大阪市の各部局で実施されているさまざまな学習に関わる内容をもとに、「市民力」を育むため、次のような学習機会の提供を進めます。

1)グローバル化への対応

・社会のグローバル化に対応できるよう、市民一人ひとりが、世界の多様な文化・民族・歴史に関する知識などを学ぶ機会の充実を図ります。さらに、国際的な活動で培われた経験や実績を持つ人材の活用に努めます。

・外国籍住民の暮らしに必要な情報提供や相談、福祉や医療などの各分野におけるサービスの提供に際しては、多言語対応の強化はもとより、文化や生活習慣の違いや社会的な立場を理解し的確な対応に努めるとともに、これらのサービスの利用促進に向けていっそうの周知を図ります。また、外国籍住民が生活するうえで必要な日本語の読み書きや言葉を学習し、日本文化への理解を深めるため、日本語や日本文化の学習機会の充実を図ります。

・姉妹都市などとの間での市民主体の多彩な相互交流を促進します。また、外国籍住民が抱えるさまざまな課題や、互いの文化を、市内の外国籍住民との間で、学習し交流する機会の充実に努めるとともに、地域コミュニティとの連携により、身近な情報を提供しあうなど、地域社会における交流を進めます。

2)スポーツの振興

・市民が主体となって自主的・自発的に設立・運営し、また、いろいろな年齢・世代の人たちが、それぞれの技術レベルや体力などに応じて、さまざまな種目のスポーツを、身近な地域で気軽に楽しむことのできる、公益性のある「総合型地域スポーツクラブ」の設立と活動内容の充実を支援します。

・スポーツセンターや屋内プールなど身近なスポーツ施設については、年齢や障害の有無にかかわらず、だれもが興味や体力などに応じて気軽に利用できるように、民間企業等の有する豊富なプログラムを市民の健康づくりやスポーツ活動に活かすなど、運営の工夫に取り組みます。

・スポーツボランティアについては、継続的に活動できるように、スポーツに関する情報提供やリーダーの育成を行うとともに、スポーツイベントや国際競技大会などにおいて、ボランティアが、企画から運営に至るまで、幅広く参画できるように取り組みます。

3)住まい・まちづくりに関する学習の推進

・市民自らが住まいや「まち」に関心を持ち、専門家等とも連携して魅力ある居住地づくりを進めることが可能となるよう、多様な学習機会の提供を行います。

・住まいや住文化に関する資料の収集や展示、参加型学習会などを開催することにより、市民が「まち」への愛着を深め、大阪の都市居住の歴史・文化を次の世代へと継承するとともに、市民主体の住まい・まちづくりを促進します。

4)健康づくりの推進

・健康づくりについての情報提供や学習機会の充実など普及・啓発に努めるとともに、地域社会で気軽に運動できる環境づくりや、民間の健康増進事業者などとの協働によるプログラムの提供など、市民が主体的に健康づくりに取り組めるよう支援します。

・健康診査による疾病の早期発見・早期治療に努めるとともに、健診結果に基づく生活習慣改善などの保健指導や健康相談を充実します。また、市民の健康管理を進めるため、保健と医療の連携強化を図ります。

・こころの健康づくりを推進し、こころの病を予防するため、ストレスとうまくつきあう方法などの講座の開催や情報提供を充実し、知識の普及・啓発に努めます。

・健康的な生活習慣の形成支援については、健康づくりを支援し生活習慣病を予防するため、医学的検査や体力測定に基づき、一人ひとりに応じた適度な運動の取組み方法や日常生活についての保健指導を行います。

・現在HIV感染者、エイズ患者が増加しており、今後も感染拡大が予想されることから、HIV・エイズのまん延防止を図るため、正しい知識の普及・啓発に努めます。

5)防災・危機管理に関する学習の推進

・市民の自主救護能力の向上支援については、一人でも多くの人が応急手当の正しい知識・技術を身につけることができるよう、市民等に対する応急手当の普及・啓発に努めます。・市民への防火知識の普及や啓発活動を推進するとともに、正しい防火技術の習得機会を提供し、市民一人ひとりの防火意識や火災発生時の対応力の向上を図ります。

・火災発生時に市民が初期消火、救護、避難誘導などを自主的かつ迅速に行えるよう、地域社会で中心となって活動する人材の育成など、地域社会における自主防火活動に対する支援を行います。

・災害発生時に被害拡大を防止するため、地域で中心となって活動する人材(地域防災リーダー)の育成や、災害時に要救護者を地域で支えるしくみづくりへの支援など、地域社会における自主的な防災活動の活性化に向けて取り組みます。

・地域の自主防犯活動の推進を図るため、安全なまちづくり活動を推進する「安全なまちづくり推進員」に対する研修を実施するとともに、地域の自主防犯活動に対して支援を行います。

・地域防災力の向上や自主防災体制の確立をめざした防災研修推進計画(市民防災研修アクションプラン)をもとに、阿倍野防災センターなどを活用して、幅広い市民を対象に各種体験学習を取り入れた防災研修を行い、より効果的に防災知識の向上を図ります。

・危機管理・防災・安全なまちづくりに関する情報を、ホームページや啓発リーフレットを通して提供します。特に、市民の防災意識のいっそうの向上を図るため、津波・水害や防災活動拠点に関する情報を掲載した防災マップを作成し配布したり、ホームページで情報を提供します。

6)障害のある人や高齢者の社会参加の機会の充実

・生涯学習やスポーツ、文化活動に関する施設が、高齢者や障害のある人などにとって利用しやすいものとなるよう取り組むとともに、個性を生かして気軽に取り組めるスポーツ活動や芸術・文化活動、学習活動などの普及を図ります。

・事業やイベントを実施する際には、手話通訳や要約筆記をつけたり、資料をわかりやすいものにし、点字化するなど、だれもが参加しやすい環境整備に努めます。

・障害のある人や高齢者が、気軽にスポーツ活動を行えるように、スポーツ教室の開催や、適切にスポーツ指導ができる指導員やボランティアの育成とともに、障害のある人や高齢が参加する競技大会の開催などに取り組みます。 

7)職業能力の向上に向けた支援

・職業適応能力の向上や新しい技能の習得など、個々のニーズに対応した職業能力開発に向けた施策について、そのあり方について検討し、推進します。

・若年者への就業支援については、一人ひとりの青少年が個性、適性などをふまえた将来への展望を持ち、主体的に進路を選択していく能力を育成するため、小学校から発達段階に応じた教育の充実に取り組みます。

・中学校・高等学校における進路指導、キャリア教育、職業教育の推進については、企業等との連携を図ることによって、職業体験(インターンシップ等)の機会の充実や、多様な人材の活用、情報の提供など、勤労観や職業観の育成に努めます。

・ニートやフリーター、あるいはひきこもりがちな青年期の青少年に対し、誰もが気軽に立ち寄り参加できる学習・交流の場づくりを進め、コミュニケーション能力向上のためのワークショップやセミナーの開催、就労支援につながるような相談、情報提供の実施など若年者の就業や社会参加のための支援を進めます。

・社会人の多様な学習ニーズに対応するため、学習関連施設において情報提供を行うなど関係機関の連携を強化し、働きつつ学ぶことを支援します。

8)市民活動 ※に参加しやすい環境づくり

・市民活動に関する情報提供の充実については、市民活動への関心を高めるとともに、関心を持つ人が情報を容易に得られるよう、多様な情報を提供・紹介できる窓口やホームページの充実を図り、積極的に周知します。

(※市民活動...平成17年(2005年)6月の大阪市市民活動推進懇話会提言の中で、市民が不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的に、自発的及び自主的に行う活動と定義されている。)

・市民活動を担う人材の育成については、市民活動を支援する中間支援組織※ とのパートナーシップのもと、市民自らが身近な課題にさらに関心を持ち、市民活動に取り組むきっかけとなる地域社会の資源や課題などについて、体験型、地域参加型、課題解決型など、さまざまな学習機会の充実を図るとともに、継続的な活動に向けたノウハウの提供を推進します。

(※中間支援組織...地域社会とボランティア団体、NPO等の変化やニーズを把握し、人材、資金、情報などの提供者との間を仲立ちするなど、市民活動団体の支援を行う団体。大阪市には、中間支援組織としての役割を果たす機関として、NPOの法人設立や運営の相談、経営支援、各種講座開催による人材育成等を行うpiaNPOなどがある。)

・市民活動の場の確保については、市民利用施設の利用時間を柔軟に運用するとともに、可能な限り公共施設の開放を進めるなど、市民活動の場の確保に努めます。

・市民、企業、NPO等、地域社会で生活し活動するだれもが参加でき、地域社会において取り組みたいことやできることなどについての意見交換をはじめ、新たな展開につながるような場づくりを支援し、市民活動の広がりや地域コミュニティのさらなる醸成をめざします。

・地域社会の課題は地域社会で解決できるように、市民に最も身近な区役所や各部局の事業所の機能を充実させるとともに、主体的に地域社会の課題解決や魅力づくりに取り組む市民活動事業に対し、ノウハウなど必要な情報提供や人材の派遣などの支援を行います。

・市民活動団体間の協働の促進については、総合的な窓口を設置し、市民活動団体に関する情報をインターネットなどで提供するとともに、NPOやボランティア、地縁型団体等の間のコーディネート機能を強化しネットワーク化に取り組みます。

・企業市民活動の促進については、企業が蓄積してきた豊富な経験をもとに、地域社会における市民活動への参画など社会貢献に向けた取組みを促進するため、情報提供や相談体制の充実、他の市民活動団体の紹介・調整などの支援を行います。

9)男女がともに個性と能力を発揮できる環境づくり

・男女がともに個性と能力を発揮できる環境づくりに向けて、市民・事業者との協働のもと、関係機関等と連携しつつ、男女共同参画センター(クレオ大阪)を拠点として主として次の取り組みを進めます。

・就業の場において、男女が性別による不利益を受けることのないよう企業等への啓発に努めるとともに、女性の能力発揮を促進する企業の取組みを支援します。

・女性の就業への支援については、多様な就業形態を選択できる環境の整備に向けた支援を行うとともに、育児等のために退職した場合の再就職など女性の就業を促進するための支援に取り組みます。また、女性が起業や事業経営、NPO活動などに取り組みやすい環境を整えるため、情報提供などの支援に取り組みます。

・男女がともに地域活動に参画し、まちづくりの担い手となるよう、地域団体等と連携した取組みを進めます。

・男女共同参画社会についての普及・啓発の推進については、関連情報等の収集・整備を進め、新聞やテレビなどメディアと連携した幅広い普及・啓発活動に取り組みます。

10)環境学習の推進
・環境保全に関する知識や技能の向上を図るための職場における環境教育を、教材の紹介・提供や情報提供などにより支援します。

・生態系への理解を深め、いのちの大切さを学ぶとともに、水の大切さを知り、公園や河川、海辺、ビオトープ※ 、農園、野外活動施設などにおける自然とのふれあいを通じた自然学習・環境学習を推進します。

(※ビオトープ...ギリシャ語のbios(生命)とtopos(場所)に由来するドイツ語の合成語。野生生物が共存共生できる生態系を持つ場所という意味を表しており、都市の中に動・植物の生態系に配慮した自然環境を復元・再生したもので、植栽・草地・池などがある。)

・環境学習関連施設相互の連携を強化し、効果的な運営を図るとともに、NPOや企業等と連携し、環境保全活動の実践に結びつくような展示や講座、体験型プログラムの充実に努め、より多くの市民の参加と交流による環境学習を推進します。

・市民参加による公園づくりや花壇づくりに取り組むとともに、花と緑と自然の情報センターを中心として、情報提供や講習会の実施に加えて、花と緑のまちづくりを推進する人材の育成やイベントの開催等によって、市民が花や緑を守り育てていくための取組みを促進します。


2  「まなび」を基本としたコミュニティづくり
       ~小学校区を中心に~


・子どもの「生きる力」の育成をめざすという教育改革の理念は、学校、家庭、地域社会が連携・協力して実現するものであり、地域社会の中で子どもを見守り育てる「教育コミュニティ」づくりへと発展させることが必要です。

・学校を拠点として、子どもとおとながともに学習し、交流できる学習機会の充実を図るとともに、地域社会の歴史や伝統をテーマとする学習機会や、地域社会の課題を共有し解決するための体験型・問題解決型の学習機会の充実などにより、学習の成果を活かした市民主体の「教育コミュニティ」づくりを進めます。

・これまでそれぞれの事業ごとに行われていた市民ボランティアの養成や組織づくりのみならず、各事業の連携・協働を図りながら、より効率的かつ効果的にそれぞれの力を集中させ、地域社会における人材確保を図るとともに、市民一人ひとりが、日常的に直面するさまざまな課題解決に向けて、自分たちでものごとを決め、ともに解決にあたるという「市民力」を身につけ、意思決定過程への関与をはじめ、市民が参画する「教育コミュニティ」づくりへと発展させていくことが必要です。

(1)地域社会で実施されているさまざまな事業・活動の連携・協働

・市民にとって最も身近な場である小学校は、さまざまな事業等により市民が集い学ぶ場となっています。現在テーマ別に運営されている事業のそれぞれの充実や効果的な運営、人材の確保などを図るためには、よりいっそう事業間の連携・協働を図る必要があります。・「教育コミュニティ」づくりを進めるため、「小学校区教育協議会-はぐくみネット-」事業はもとより、大阪市が小学校区で行っている生涯学習関連事業について連携・協働を促進します。人権啓発推進員とも連携しながら、人権教育の視点をふまえて、市民が参加しやすい事業づくりに努めます。

・連携・協働を図る事業については、市民に対する各事業の説明会を協働して実施したり、事業ごとに組織されている運営委員会や地域単位の協議会(ネットワーク)が、地域事情に見合った組織・形態で柔軟に運営されるよう、関係部局が相互に連携・調整を図りつつ進めます。

・将来的には、「教育コミュニティ」づくりを通して培われた「市民力」をもとに、健康・福祉・スポーツなど、幅広いコミュニティ施策に関わる各事業との連携・協働を進め、市民が自ら考え、学習し、行動するネットワークを活かした、「持続可能なまちづくり」をめざします。


(2)学校を拠点に子どもとおとながともにまなび活動する場の充実

1)活動の充実・発展

・学校を拠点に市民の自主的な生涯学習の活動を支える基盤となる生涯学習ルーム事業を、より主体的な取組みとなるよう、充実・発展を図ります。

・「はぐくみネット」による学校・家庭・地域社会のネットワークを活かして、市民一人ひとりの学習の成果を学校教育や地域活動などに還元できるよう支援を行います。

・生涯学習ルーム事業への子どもの参加を促進するなど、子どもたちが、地域社会において、おとなと交流し共通の体験をする機会や、自らの地域社会の行事に関わる機会づくり、自主的に企画・運営する事業の実施などに努めます。

・特に、中学生・高校生が地域社会で活躍できるよう、中学校や高等学校との連携を図ります。

・育児に関する知識の普及や、子育て仲間との情報交換の場づくりを図るとともに、家庭教育に関する学習機会や親子で楽しめる体験機会の提供など、家庭教育の支援に取り組みます。

・生涯学習ルーム事業や「はぐくみネット」の活動のなかで特色ある取組みや、総合生涯学習センターなどの中核・拠点施設で開発した新たな学習プログラムを紹介するなど、各小学校区での活動の充実を支援します。

・生涯学習ルーム事業で結成されたグループ、PTA活動から生まれたグループなど、さまざまな場所で子どもの読書活動を支援するボランティアグループと図書館との連携・協力を図ります。

・子どもたちの読書活動を豊かなものとしていくうえで、学校と図書館の連携による蔵書の効率的な運用が重要であり、大きな課題です。学校図書館間及び図書館との資料提供の相互協力推進のための条件整備を図ります。また、学校図書館の運営にかかわる相談や情報交換、司書教諭の研修の充実など、学校と図書館の円滑な連携等を促進し、学校図書館への支援体制を整備します。

・読書支援活動ボランティアや、地域社会で子どもの読書活動の支援を行う人々、子育て関連施設や学校など子どもの読書活動支援にかかわる施設にとって、図書館が相談・支援センターとしての役割が果たせるよう取り組みます。

2)活動場所の確保と調整

・学校施設の活用については、学校教育での利用を優先としつつ、特別教室の有効な活用を促進します。活用にあたっては、乳幼児から高齢者までさまざまな世代の市民が参加しやすいよう配慮するとともに、学校・家庭・地域社会の協力により、調整を行う組織づくりを進めます。

・校舎建替え時には、子どもの安全確保を図りつつ、市民が学校を利用する際に使いやすいよう、各校の状況に応じながら、校舎および特別教室の配置等に可能な限り配慮します。具体的には、市民の利用が想定される多目的室や会議室、図書室、特別教室、講堂、体育館などを校門から近い場所に集中的に配置し、一般の教室とシャッター等で分離できるようなしくみをつくるなど、学校が「教育コミュニティ」づくりの拠点となるよう努めます。また、各小学校区や各区にある生涯学習関連施設等との連携を促進し、地域社会における「まなび」のネットワークづくりを進めます。


(3)文化・スポーツ振興を通じたソーシャル・キャピタルの向上

・地域社会における文化・スポーツといった活動が活発に行われるよう支援することにより、人々の生きがいや健康、体力づくりはもとより、家庭や世代間のふれあいと交流の促進、地域社会の歴史や伝統、文化といった地域資源および無形の資産、社会関係資本の再発見・構築につながるよう努めます。

1)市民団体による学習の振興

・大阪市における地域社会の学習活動の多くは、PTA、地域振興会、地域女性団体、青年団体、青少年指導員、子ども会、老人会、体育厚生協会、体育指導委員、人権啓発推進(協議)会、人権啓発推進員などにより取り組まれています。

・今後、これらの地域社会における学習活動の充実や活性化を支援し、団体・指導者の養成に資するよう、学習方法やプログラムの提供、資料・教材・指導者・他団体活動状況の紹介など、きめ細かいアドバイスや情報提供に努めます。

2)市民文化の振興

・青少年の育成、高齢者の豊かな生活づくり、勤労者の退職後の地域活動への参画にあたっては、趣味、文化、教養などの学習活動を媒介にして、地域社会のネットワークづくりの契機とすることが重要です。

・市民一人ひとりが自主的に学習活動に取り組むうえで必要な、民間教育機関や市民団体の実施する講座・イベント等の開催情報の提供や、生涯学習ルーム事業における自主運営の学習活動の内容の多様化・豊富化に向けた助言指導などを行い、「まなび」を媒介とした「教育コミュニティ」づくりや個人の生きがいづくりを支援します。

・また、身近な地域社会において、だれもが優れた芸術文化に気軽にふれることができるよう、区生涯学習フェスティバルなどの市民文化祭的な催しや、区単位での生涯学習ルーム事業の活動成果の発表・交流の機会、小学校区でのふれあいまつりなどの実施を促進し、地域社会における文化振興と新しい市民文化の創造を図ります。

・「教育コミュニティ」づくりの一環として、活動にかかわる幅広い世代の市民が、自らの「まち」の歴史や文化の掘り起こし・再発見を行い、その成果を物語やガイドブックにまとめたり、学芸員や民間の専門家の支援を得ながら芸術作品等として制作するなど、芸術や文化を媒介にした「まちづくり」や「まなび」のしくみづくりを進めます。

3)地域生涯スポーツの振興

・大阪市では、「大阪市生涯スポーツ振興計画」を平成15年(2003年)に策定し、生涯スポーツを「市民一人ひとりが、生涯のあらゆる場面において、それぞれの個性やライフスタイルに応じて、楽しみや生きがいを持って、健康づくりができるような身体活動」と位置づけ、その推進を図り、「スポーツパラダイス大阪」の実現をめざしています。

・幼少年期から高齢期にいたる人生のあらゆる場面において、自らの個性やライフスタイルにあったスポーツを選び楽しめるよう、情報提供・環境整備・機会提供・指導者養成・活動支援等の各具体施策を行い生涯スポーツを振興します。

・身近な地域社会において、いろいろな年齢・世代の人たちが、それぞれの技術レベルや力などに応じて、さまざまな種目のスポーツを気軽に楽しむことができる、市民が自主的に運営する「総合型地域スポーツクラブ」の設立とその活動内容の充実を支援します。

・障害のある人や高齢者、定期的に運動を行っていない人が運動・スポーツを始めるきっかけづくりを進めるため、気軽にスポーツ活動を行えるようなイベントや教室の実施、適切にスポーツ指導ができる指導者の育成、既存施設の利用方法の工夫など、市民がスポーツに親しめる環境整備に努めます。

(4)「教育コミュニティ」づくりを支えるしくみづくり

・学校・家庭・地域社会の連携を深め、「教育コミュニティ」づくりを進めるためには、生涯学習ルーム事業の企画・運営のほか、相談や情報提供、人材の発掘等、地域社会における生涯学習を推進する調整役である生涯学習推進員、「はぐくみネット」コーディネーターなどの市民のボランティアが、今後いっそう「教育コミュニティ」づくりの推進を担う中核的な役割を果たせるよう、支援を行う必要があります。

・そのために、総合生涯学習センターや市民学習センター、青少年会館、図書館、博物館施設をはじめとする本市の生涯学習関連施設・機関のネットワークのもと、各事業の調整役を支援し、その活動の基盤を支える体制を充実します。

・これまで、各小学校では、生涯学習ルーム事業や学校体育施設開放事業など、事業ごとに学校施設の利用のあり方が検討されてきましたが、今後、「教育コミュニティ」づくりをいっそう進めていくためには、各事業を包括して、学校施設の管理や問合せ対応、各事業の調整役や学校との連絡調整、日々の活動の記録などを担う「市民スタッフ」の養成・確保が必要であり、その方策についての検討を進めます。

・総合生涯学習センターや市民学習センターなどの本市生涯学習施設を、各小学校区に対し情報提供や相談など活動支援を行う「教育コミュニティ」支援拠点と位置づけます。

・「教育コミュニティ」支援拠点では、担当職員を中心に、「教育コミュニティ」において重要な役割を担う各事業の調整役や、学習活動の企画・運営の中心となる生涯学習推進員の研修や交流会の充実を図ります。

・また、小学校区において積み重ねた学習活動の成果をもとに、さらなるステップアップを希望する市民に対しては、そのニーズに応えられるよう、区域・広域の生涯学習推進体制との連携を図り、より専門的・高度な学習機会や、「生涯学習インストラクターバンク事業」など学習成果を活かせる機会についての情報提供やアドバイスを行います。

・区においては、生涯学習推進員区連絡会の活動支援を行い、生涯学習ルーム事業の充実・発展を支援するほか、区と区コミュニティ協会とが協働して、PTA協議会・地域女性団体協議会・子供会育成連合協議会・老人会・青少年指導員・体育指導委員等の市民団体との相互の連携を深め、それぞれの団体が地域社会でおこなっている学習活動についても連携・協働を図り、小学校区における「教育コミュニティ」づくりを支援します。

・地域図書館は、地域の生涯学習を支える基盤施設として位置づけるとともに、市民に必要なさまざまな分野の情報や資料を提供する、総合的な情報センターとしての機能を充実させます。具体的には、保育所や高齢者福祉施設等に派遣する読書支援活動ボランティアの活動の拠点として、乳幼児、高齢者、障害のある人など図書館への来館が困難な市民の読書ニーズに応えるとともに、ブックスタート事業※ や「おはなし会」など、地域社会に根ざした読書支援活動を推進します。また、「はぐくみネット」で実施している読書活動支援の充実、拡充を図るとともに、生涯学習ルーム事業で結成されたグループ、PTAから生まれたグループなど、さまざまな場所で子どもの読書活動を支援するボランティアグループとの連携を図り、活動の支援を行います。さらに、青少年会館をはじめ子どもの読書活動に取り組む諸施設との連携・協力を進め、積極的な情報収集・提供など、地域社会における子どもの読書活動の相談・支援センターとしての役割を果たします。

(※ブックスタート事業...平成4年(1992年)にイギリスで「Share Books with your baby(親子が本をよろこびわかちあおう)」をキャッチフレーズに、絵本を通じて親子の絆を深めることを目的として始まった運動で、市町村自治体の保健所で実施される乳児健診時に、絵本や子育て支援に関する資料、絵本リストなどの入ったブックスタート・パックを、読み語りの意義や効果などを司書等が指導・助言しながら親子に手渡す形で実施されることが多い。)


3 大阪の歴史・文化・自然環境を活かした「まなび」のネットワークづくり

・大阪は、古代難波宮の時代から、日本の玄関口として、国内だけでなくアジアを中心に世界に開かれた国際交易・商業都市として発展し、その後、大坂本願寺の寺内町、豊臣時代には城下町としてさらに発展を続け、17世紀以降は「天下の台所」と呼ばれる生産・流通の拠点、また国内最大の経済都市として栄えました。この経済力を背景に、町人文化が開花し、近松門左衛門、井原西鶴、富永仲基、山片蟠桃、木村蒹葭堂、緒方洪庵などの文人や学者を輩出しました。明治以降も、日本一の近代工業都市として、数多くの近代建築物が建てられ、豊かな文学や芸能文化を育んできました。また、早くから都市化が進んだ大阪にも、上町台地に残る社寺林、多くの魚介類が生息する淀川などの豊かな自然が残されています。

・わたしたち大阪市民は、これらの大阪の歴史・文化・自然環境に育まれて成長してきたことを忘れず、これらの資源を十分に活かした「まなび」のネットワークをつくる中で、次の世代を育んでいかねばなりません。



(1)歴史・文化資源や自然環境・生活文化の再発見と発信

・史跡や歴史的建造物をはじめ、伝統芸能や祭事、地域社会にまつわる歴史、大阪の人やことば、食などの生活文化に関わる有形・無形の歴史・文化資源の保存と再発見、大阪の自然や産業・科学技術の掘り起こしを行います。

・「あきない」や「ものづくり」、食、多文化が共生する「まち」そのものの魅力を、市民や大阪を訪れた人にわかりやすい形で紹介し、楽しんでもらえるよう、市民主体の歴史・文化資源や自然環境・生活文化の再発見の取組みを支援するとともに、人々が文化遺産にふれる機会を拡充することによって、次世代への継承を促します。

・美術館や博物館においては、より多くの人々が訪れ楽しめる施設をめざして、国内外の施設や企業・団体とのネットワークの活用やマスメディア等との連携強化を進め、常設展示のいっそうの充実に取り組むとともに魅力的な特別展・企画展を通して、展示魅力の向上を図り、多様な芸術文化に触れる機会を提供します。

・博物館・美術館・市民学習センターなどが連携して、共通テーマのもとで企画展を計画的に開催するとともに、市民が市内各地の歴史・文化資源や自然環境をわかりやすく紹介するガイドブック作りやリーフレット作りなどの情報発信(広報)活動を支援します。

・博物館施設という「点」から、市内各地に「面」として存在している歴史・文化資源や自然環境に、市民のみならず市外から大阪を訪れた人が触れることができるよう、大阪観光ボランティアなどのボランティアやNPOと連携し、「大阪歴史再発見事業」の内容を多様化するなど、博物館を拠点に「まち」を回遊しながら地域社会の魅力を知り体験できる市内探訪などのしくみづくりを進めます。

・公園や河川、海辺、ビオトープ、農園などにおける自然とのふれあいを通じ、大阪の自然に関する学習を推進し、自然のすばらしさとともに、活動のなかで人間関係づくりについても学べるような機会を、野外活動施設等とも連携して提供します。

・エコ・ミュージアム※ に取り組もうとする地域を、区や生涯学習関連施設と連携しながら支援し、歴史・文化・自然環境を軸にした地域社会づくりを支援します。


(※エコミュージアム...エコ(ecology)とミュージアム(museum)の合成語。「環境博物館」の意から発し、最近では、地域社会の人々が中心となり、地域社会の有形・無形の資源を活かし保全するという、「地域まるごと博物館」の意味で使われている。)

(2)大阪の歴史・文化資源や自然環境などに気づき、活かすためのしくみづくり

・博物館施設の機能を活かし、総合生涯学習センター・市民学習センターをはじめとする生涯学習施設とのネットワーク化を図りながら、さまざまな文化・芸術活動を通して大阪の魅力を発信する市民を支援するなど、大阪の歴史・文化資源や自然環境・生活文化に気づき、活かすためのしくみをつくります。

・大阪城周辺や市内の旧跡、また、河川や海辺の水辺空間や公園など、大阪の歴史・文化資源や自然環境を活かせるエリアを、芸術文化やエンターテインメントの場として活用し、楽しくにぎわいのある環境を創出するとともに、市民や大阪を訪れた人に対して、大阪の魅力を伝えます。

・生涯学習ルーム事業参加者や市民学習センター利用グループなど市民が、美術館や博物館の学芸員、民間の専門家やNPOなどと協働して、大阪の歴史・文化資源を活かした芸術作品(オブジェやモニュメントなど)を作成したり、歴史・文化資源や自然環境をテーマにした探訪ツアーを実施できるよう支援します。

(※地域の歴史・文化資源を活かしたまちづくりの参考事例
大阪では、最近さまざまな地域社会の歴史・文化資源を活かしたまちづくりが行われている。そのひとつとして、天王寺区の空堀周辺では、この付近に古くから残る長屋の魅力を活かし、アーティストの作品を展示したり、ワークショップ、講演会やパネル展示などにより、アートを通じて歴史ある「まち」の魅力を多くの人に伝える取組みが行われている。全国的には、新潟県十日町市を中心とする妻有地域の6市町村において国内外から参加したアーティストの作品(演劇、ワークショップ等を含む)が展示、展開された「大地の芸術祭 越後妻有(つまり)アートトリエンナーレ」が有名である。その手法は、市民がアーティストと共に地域の自然や歴史的建築物などを活かした芸術作品を作成したり、役者として舞台にあがるなど何らかの形で芸術文化活動に取組み、市民も普段の生活の中では気づくことのなかった「わがまち、わが村の魅力」に気づくというものであり、国内外から約20万人の参加者がみられた。)

(3)「まなび」のネットワークづくり

・図書館や博物館などの施設が人・物・情報の連携を構築し、豊富な学習資源を活かした情報提供機能や相談機能の充実を図り、教員や生涯学習関連施設職員の資質向上に努め、市民の自主的な学習や取組みを支援します。

・市民やNPOによる大阪の歴史・文化資源や自然環境・生活文化などをテーマにした研究・発表などの取組みについて、博物館などの施設が連携・協働するとともに、ボランティア・コーディネート機能、芸術文化関連諸団体との連携を強化するなど、市民との協働による「まなび」のネットワークを構築します。

(※「まなび」のネットワークづくりの参考事例
大阪市立自然史博物館では、友の会活動やクラブ活動を通して市民や中学生・高校生の学習を支援している。まず、「自然史博物館友の会」は、博物館を利用して、市民が自然に親しみ、勉強していくことを支援しており、ハイキングや合宿などの自然観察プログラムの開催や、博物館のボランティア事業への協力を行っている。「ジュニア自然史クラブ」は、昆虫・植物・生物や、化石・岩石・地層などが好き な中学生・高校生が集まって、博物館の学芸員と一緒に野外に出かけたり、室内で観察したり、標本を作製したりする活動を通して、学校の枠をこえ、博物館の器具や資料を使って、学芸員に気軽に質問したり相談しながら、研究を深めている。さらに、大阪の自然と各団体の活動を紹介し、その交流を深める事例として、「大阪自然史フェスティバル」があり、大阪周辺で活躍する自然関連の研究グループ・ア マチュア・保全活動・観察会が一堂に集まり、それぞれの活動を紹介し、お互いの交流を深める場となっている。)

ページのトップへ戻る 閉じる