団体貸出



「すてきなスケッチブック」
山田 千鶴

 

 おさるのモンきちは、青いリボンをだいじそうにひっぱります。
 「なんだろうなあ」
 きょうは、モンきちのおたんじょう日です。そして、いちばんのおたのしみは、もちろんプレゼント。ドキドキしながら、クマのえのつつみを、ていねいにひらきます。
「やったあ。スケッチブックだ!ぼく、これずっとほしかったんだ。ありがとう」
そのよる、モンきちは、スケッチブックをまくらもとにおいて、ベットに入りました。
 たいようが、お山からかおを出すころ、モンきちも目をさましました。
「おはよう、ママ」
「まあ、まあ、ずいぶんはやおきね」
「だって、きょうは、おかの上で、おふねのえをかくんだもん」
「あら、そうなの。気をつけて、いってらっしゃい」
 お花ばたけをよこぎり、草むらをかけぬけ、おかの上のいちばんお気にいりのばしょにつくと、スケッチブックをひらき、クレヨンをとり出しました。
 「かっこいいなあ。ぼくもぜったい大きくなったら、あのおふねのせんちょうさんになるんだ」
 モンきちは、ゆめ見るように、おふねをながめると、スケッチブックいっぱいに、かきはじめました。すると、
 「いいなあ。わたしも、一まいちょうだい」
 そういうのは、うさぎのミミちゃんです。モンきちは、「いいよ」と、ていねいに一まいやぶいて、ミミちゃんにあげました。
「ありがとう。わたしは、お花ばたけのえをかくの」
 ミミちゃんはスキップで、おかをおりていきました。
 モンきちは、また、おふねのえをかきはじめました。すると、
 「いいなあ。ぼくも一まいおくれよ」
 こんどは、くまのボビーです。モンきちはいやだなあと、おもいながらも、「一まいだけだよ」といって、やぶいてやりました。「ありがとう。ぼくは森のえをかくんだ」
 ボビーは、はりきって森にむかいました。
 モンきちは、じぶんのかいたおふねを見て、にこにこしていました。つぎは、どんなかざりを付けようかなとワクワクしているとせなかをトントンと、だれかがたたきました。
 ふりむくと、りすのビッツです。「いいなあ。わたしも一まいほしいな」
 モンきちは、うーんと、うなりながらも、一まいやぶいて、ビッツにあげました。
 「ありがとう。わたしは、けさやいたケーキのえをかくわ」
 そういうと、ビッツはかけ足でいえにむかいました。
  モンきちのおふねには、かっこいい“ほ”がはられ、いまにも、すすみだしそうです。
 じぶんおおふねを、まんぞくそうにながめていると、そばにだれかがいます。
 「いいなあ。ぼくにも一まいわけてよ」
 見上げると、きつねのフォルクが立っていました。モンきちは、とてもなやみました。それもそのはず、スケッチブックは、あと二まいしかのこっていなかったのですから。
 それでも、やっぱりモンきちは、一まいやぶいて、わけてあげました。フォルクは、とっても、うれしそうです。
 「ぼくがなにをかくかは、ひみつさ」
 そういうと、モンきちにせなかをむけて、なにやら、かきはじめました。
 モンきちは、しばらくねころがって空を見上げていると、いつのまにか、ねむってしまいました。
 「なんだかいいにおい」
 モンきちが目をこすりながらおき上がるとモンきちのそばに、みんながあつまっていました。それだけではありません。モンきちのおふねのまわりには、きれいなおがわのながれる森や、お花ばたけがひろがっていて、そこには、わらいながらケーキをたべているモンきちたちがいました。
 「おたんじょう日、おめでとう。このえは、みんなからのプレゼント」
 モンきちは、すっかりそのプレゼントに見とれてしまいました。すると「はやくビッツごじまんのスペシャルケーキをたべようよ」と、ボビーは、もうまちきれないというようにいいました。
 モンきちは「いちご、いちご!」と、だいすきないちごにフォークをさしながら、プレゼントのえを見ました。すると、どうでしょう。えの中のモンきちも、にこにこしながらちょうど、いちごをたべようとしているところでした。みんなは、かおを見あわせて、おおわらいしました。
 スケッチブックは、もう一まいしかないけれど、たいせつなともだちにかこまれて、モンきちは、とっても、しあわせな気もちでした。