団体貸出



「ハナの願い」
西泊 奈美

 

  とてもあつい、なつの日のことです。
  ハナはいなかにある、おばあちやんのいえに、あそびにきていました。
  そのよる、ハナはねむいのをがまんして、おそくまで一人でおきていました。
  ハナは、まどのちかくにすわって、空にかがやくほしたちを、じっと見つめていました。
  じつは、すこしまえの日のことです。ハナは学校で、ながれぼしのはなしをききました。
  ながれぼしにおねがいすれば、ひとつだけねがいがかなうというのです。
  ハナには、ねがいごとがありました。だからどうしても、ながれぼしが見たかったので
す。
  「ながれぼしさん、まだかなぁ。」
  まちくたびれて、ハナはすこしねむくなってきました。
  するとそのとき、ながれぼしが一つ、キラッとひかりました。
  「あっ!ながれぼし!」
  ハナはいそいで、ねがいをいいました。「あたらしくて、まっ白なじてん車をかってもら
えますように。」
  ギュッと手と手をかたくにぎって、ハナはおねがいしました。
  すると、ふしぎなことがおこりました。
  ハナの目のまえに、小さなひかりがキラキラあつまってきたかとおもうと、そのひかり
は、大きなひかりのかたまりになりました。
  そして、ひかりの中から小さなてんしがあらわれました。
  てんしは、ハナを見るといいました。
  「こんばんは。あなたのねがいは、なにかしら?一つだけかなえてあげましょう。」
  ハナはすこしおどろきましたが、てんしにいいました。
  「あたらしいじてん車がほしいの!いま、もっているのはおねえちゃんのおさがりで、
もうきたないし、かわいくないの。まっ白なじてん車をください。」
  それをきいて、てんしはいいました。「あなたがほんとうにほしいのは、じてん車なの?
よ〜く、かんがえてごらんなさい。」
  ハナはすこしかんがえました。でもどうしても、ほかにはおもいうかびません。
  そのようすを見て、てんしがいいました。
「わからないのかな?では、ほかの子どもたちが、どんなおねがいをしているか、おしえ
てあげましょうか?」
  ハナはコクンとうなずきました。
  てんしはいいました。
  「にしのくにで、大きなじしんにあった子はいままですんでいた、いえにかえりたいと
いっていたよ。
  せんそうのばくだんで、左足をなくした子は、げんきにはしりまわれる、じょうぶな足
がほしいといっていたわ。
  きたのくにで、たべるものがなくて、たおれていた子は、かぞくみんなにあたたかいた
べものをくださいといっていたよ。
  よくなるかどうかわからないびょうきで、びょういんにいた子は、けんこうなからだが
ほしいといっていたわ。」
  そして、もう一ど、てんしがききました。
  「ハナ?なにがほしい?」
  ハナはだまって、うつむいていました。
  ハナはなぜか、ないていました。
  そして、てんしのそばにちかよると、耳もとでなにかいいました。
  てんしは、ウンウンとうなずいて、
  「そのねがいをかなえましょう。」
  といいながら、ひかりにつつまれ、そしてきえてしまいました。
  てんしがきえてしまったあと、ハナはまたほし空を見上げました。
  すると、たくさんの小さなほしたちが、いっせいにひかりかがやき、空をつつみました。
  そしてみんながしあわせになれるようにと、あかるく、せかい中をてらしました。