団体貸出



「げんきが出なくなったお日さま」
山口 亜由美

 

 「うつびょう」というココロのびょう気をしっていますか?おなかがいたくなったり、
かぜをひいたりするのと同じように、ココロだってびょう気になることがあるんですよ。
これは「うつびょう」になったお日さまのおはなしです。

  大きな大きな空の中、お日さまはピカピカパワーを出してまわりのみんなをげんきにし
てあげるだいじなおしごとをしています。
  「みんなのためにがんばるぞ。」
  と、お日さまは一生けんめいピカピカパワーを出すのです。
  「お日さま、ありがとう!」
  よろこんでもらえるとうれしくなって、もっともっとがんばろうとおもいました。
  「よーし!がんばるよ。まだまだ…」
  あれれ?ピカピカパワーをたくさん出しすぎて、もう出なくなってしまったみたいです。
まだよるには早いのに、あたりはどんどんくらくなっていきました。
  げんきの出なくなったお日さまは、みんなのことをかんがえるとしんぱいでしんぱいで、
なき出してしまいました。なみだはとまりません。やがて、なみだは雨になって、ザーザ
ーぶりになりました。
  「えーん。ボクのせいでみんながげんきなくなっちゃったらどうしよう。ボクのせいだ。
ボクがわるいんだ。えーんえーん。」
  「うつびょう」というびょう気になると、ほんとうはがんばりたいのにどうしてもがん
ばることができなくなってしまいます。だから、じぶんのことをだめなヤツだとおもいこ
んでしまうのです。しんどいよね。お日さまもこのままだとげんきがもどってきません。
ながいながいよるがつづきます。
  そんなとき、お月さまがやってきました。「どうしたの?お日さまはぜんぜんわるくない
わ。しんどいときはゆっくり休めばいいのよ。」
  お月さまのやさしいことばで、お日さまのなみだはようやくとまりました。
  「お日さまはがんばりやさんだものね。そこがお日さまのいいところだけど、がんばり
すぎるとつかれてげんきが出なくなっちゃうわ。お休みしたり、だれかに手つだってもら
うことも、たいせつじゃないかしら?」
  「うん…ありがとう。」
  お日さまはお月さまにしごとをまかせて、おうちにかえって休むことにしました。そし
て、お日さまのかわりにお月さまがピカピカパワーを出しはじめました。でも、お月さま
はお日さまよりからだが小さいので、お日さまのようにはいきません。
  「いいの。わたしはじぶんにできる力でちょっとずつやるわ。」
  お月さまのピカピカパワーはつよくはないけれど、やさしくてあたたかでした。そんな
お月さまを見て、おほしさまたちも手つだいにきてくれました。一人一人の力は小さくて
も、みんなのピカピカパワーをあわせるととても大きな力になったのです。

  どのくらいたったでしょうか。お日さまがもどってきました。お月さまもおほしさまた
ちも大よろこび。
  「げんきになってよかったね。これからはむりしないで、みんなで力をあわせてやってい
きましょう。みんな、お日さまがげんきでいてくれることが一ばんうれしいんだから。」「あ
りがとう。みんなのおかげだよ。これからはいっしょにちょっとずつがんばろう。」

  こうしてあさがやってきました。げんきになったお日さまはきょうもみんなにピカピカ
パワーをとどけます。お日さまニコニコ、いいえがお。みんなもニコニコ、いいえがお。
えがおっていいね。