団体貸出



「あかりちゃん」
しばい みきこ

 

 「ねぇママ、ゆうこのこころの中にあかりちゃんおるんやって」
ようちえんのバスから下りてきたゆうこはうれしそうにはなしました。
  「あかりちゃんってなんなん?」
  「ろうそくのあかりちゃん」
  「ろうそくのあかりちゃん?」
  「きょう、えり先生ゆうてたもん。みんなのこころの中にはろうそくのあかりちゃんが
おるって。おともだちとなかよくあそんだり、おもちゃかしてあげたり、“ありがとう”“ご
めんね”“いいよ”とかいえたら、あかりちゃんのほのおが大きくなって、ぴかぴかになっ
て、うれしい気もちになるねんて。でも、おともだちをよしてあげへんかったり、おもち
ゃをかしてあげへんかったり、
“だめー”“きらい”とかゆったら、あかりちゃんのほのおがちっちゃくなって、かなしい
気もちになるんやって」
  「そうなん。ゆうこのあかりちゃんは、ぴかぴかかな?」
  「・・・ううん」
さっきまでげんきにはなしていたゆうこは、しょんぼりとしたこえで、こたえました。
  「なんで?」
  「あんな・・・」
ゆうこは、きょうのようちえんでのことを、はなしはじめました。
  「きょうもな、ゆみちゃんとりえちゃんと、ままごとしてあそんでてん。そしたらゆう
くんが“よしてー”ってゆってきてん。でも、ゆうこは、ゆみちゃんとりえちゃんとあそ
んでたから、ゆうくんよしてあげへんかってん。ゆうくん、かなしそうなかおして、どっ
かいってん。ゆうくんよしてあげへんかったから、ゆうこのあかりちゃんちっちゃくなっ
ちゃった・・・」
  「そっかぁ。ゆうこのあかりちゃん、ちっちゃくなったんかぁ。じゃあ、またあかりち
ゃんがおっきくて、ぴかぴかになるように、がんばったらいいんちゃう?」
  「でも、どうしたらいいんかな・・・」
そして、つぎの日。ながいはりが6になり、ようちえんのバスがやってくるじかんです。
ゆうこは、バスにのり、となりのともくんにおはようをいうと、きのうのことを、またか
んがえはじめました。
  『うーんと、えーっと…。あっ、そうか!!』
バスは、ようちえんにつきました。
  「ゆみちゃんおはよー。りえちゃんおはよー」
げんきのいい、きもちよいあいさつです。
  「ゆうこちゃん、おはよー」
  「なぁなぁ、きょうもままごとして、あそぼー」
  「うん、ままごと、しよ」
  「ほんでな、きょうは、ゆうくんもよしてあげへん?」
  「えー、なんで?ゆうくんは男の子やで」
ゆみちゃんとりえちゃんはいいました。
  「男の子やからって、ままごとよしてあげへんの、かわいそうやん。それに、ゆうこた
ちのあかりちゃん、だんだんちっちゃくなっていくとおもうねん」
  「そうやなぁ、ゆうくん、かわいそうやったかもなぁ」
  「あっ、ゆみちゃん、りえちゃん、ゆうくんきたで」
  「ほんまや」
  そういうと3人は、ゆうくんのところにはしっていきました。
  「ゆうくんおはよー。いっしょにままごとせぇへん?」
  「えっ!?」
  ゆうくんはびっくりしていましたが、うれしそうに、こくりとうなずきました。
  みきちゃんと、まきちゃんもまじって、ままごとをしてあそぶ6人のあかりちゃんのほ
のおは、大きく、ぴかぴかにかがやいているのでした。
―みんなの あかりちゃんは ぴかぴかですか?―