団体貸出



「ねこやしき」
秋友 佑美

 

  みんながよく行くおかしやさんのうらに、たくさんのねこがすんでいる家がありました。
  転入生のハナエは、このねこたちと一緒にすむことになったようです。
  いよいよ、二学期。真っ黒に日焼けしたお友達がいっぱいです。シンイチもそのうちのひ
とり。なんだか、こうふんしています。
  「転入生くるねんで」
マサオも目をキョロキョロさせて、
  「ハナエちゃんっていうんだって」
と返事をしています。二人がこうふんしているのはなぜって?・・・ハナエがすむことにな
ったお家は、たくさんのねこと秘密がいっぱいだからです。早くハナエと友達になって、あ
のねこやしきにいってみたいのです。だからついつい、
  「なぁ、ねこやしきにすんでるんやろ」
  「俺らもいきたいねん」
といきなり聞いてしまいました。
  シンイチもマサオもいじわるで聞いたのではありません。けれど、とつぜん聞かれたハナ
エはびっくり。ねこやしきってどういうこと?心の中は一気にくもり空になってしまいまし
た。
  「・・・しらん」
  本当は友達になりたかった三人。これではおもしろくありません。ハナエはしょんぼり。
  帰り道、ひとりで帰るハナエの後ろを誰かがこっそりついてきています。ハナエは気づか
ずに歩いています。
  すると、ふと、たちどまりました。
  「また、ねこがいる。捨てられたのかな。かわいそうなニャンちゃん」
  どうやら家につれて帰るみたいです。それを見ていたシンイチとマサオはびっくり。あん
なにたくさんねこがいるのにまたつれて帰るなんて。それもドロドロによごれたねこを。
  こっそりついて来たのは二人でした。ごめんって言おうとしてきたのに、またまた知りた
い事がふえてしまいました。もう少し、秘密でついていこうかな。
  「ただいまー。おばあちゃん。またねこがいたよ。かわいそうだからつれてきたよ」
  奥から出てきたのは、とってもやさしそうなおばあちゃん。
  「おかえり、ハナエちゃん。そのニャンちゃんも家族にしてあげましょう。それより、学
校はどうだったんだい」
  そう聞かれてハナエはまた悲しくなりました。
  「・・・おばあちゃん。実はね。・・・」
  今日あった出来事を話そうとしました。けれど、おばあちゃんが心配するのが嫌で何も言
えません。そのとき、
  「ハナエちゃん!俺らが友達第一号になってもええ?」
  ハナエとおばあちゃんが振り返ると、照れくさそうに二人が立っていました。するとまた
大きな声で
  「ねこやしきって言うてごめん。ほんまごめんな。いっぱいねこがおるから入りたかって
ん」
  マサオが言うと、続けてシンイチも、
  「捨てられているねこを、おばあちゃんが飼ってくれてたんやなぁ。ほんま、ごめんな。
嫌な気持ちになったな。許してくれる?」
  ハナエは嬉しくてたまりません。
  「いいよ。もう怒ってないよ。それよりこっちで一緒にニャンちゃんに名前をつけようよ」
  ハナエとおばあちゃんのやさしい笑顔をみて、ふたりはホッとしました。たくさんのねこ
に囲まれて、おばあちゃんと三人はとても楽しくすごしました。