団体貸出



「すなのトンネル」
黒川 佐和子

 

 ぼくは おすなあそびが だいすき。
 やまを つくって かわを ながして
おいけには はっぱのふねを うかべる。

  ぼくは いっつも ひとりで あそぶ。
  だって おともだちの りょうたくんや
ゆうまくんは おすなあそびより かいじゅ
うごっこが すきみたいなんだ。

「かいじゅうの ゆうまが きたぞー」
「ゆうまを やっつけろー」
  ぼくは かいじゅうごっこは あんまり 
すきじゃない。

  あるひ ようちえんのせんせいが ぼく
のおかあさんに いった。
「きよしくんは、いつもひとりであそんで
いるようです。もうすこしおともだちとあ
そべるようになると、いいんですけどね」
  おかあさんは だまって うなずいていた。

  いえにかえってから おかあさんが ぼく
に きいた。
「きよし、どうしておともだちとあそばな
いの?」
「だって ぼく かいじゅうごっこ きら
いなんだもん」
「そうね。きらいなあそびは、むりにしな
くてもいいわよね」

  よかった。おかあさんは ぼくのきもち
わかってくれた。ほんとはぼく おこられ
るんじゃないかって ちょっと しんぱい
してたんだ。

  つぎのひ ゆうまくんが ようちえんを
やすんだ。
  りょうたくんが いった。
「きょうは ゆうまが いないから きよし
が かいじゅうだ。みんなで きよしを
やっつけろー」

  すると みんなが いっせいに ぼくに
おそいかかってきた。
  いやだ。ぼくは かいじゅうなんかじゃ
ないぞ。

  ぼくは さけんだ。
「やめろー。ぼくは かいじゅうごっこな
んか しないぞ。きらいなあそびは むり
にしなくていいって おかあさんが いっ
てたもん」
  みんなは ぼくにおそいかかるのを や
めた。
  せんせいが ちょっとびっくりしたかお
で ぼくのほうを みていた。

  つぎのひ ぼくが すなやまにトンネル
をほっていると ゆうまくんが やってきた。
「ぼくも いっしょに やっていい?」
「いいよ」
  ゆうまくんは いった。
「ぼく おかあさんが みんなとあそびな
さいって いうから がまんして かいじゅ
うごっこ してたんだけど ほんとは おすな
あそびのほうが すきなんだ」

  トンネルがかんせいしたとき ゆうまくん
は とっても うれしそうだった。
  あしたも いっしょに おすなあそび
しような。