団体貸出



「どうぶつ村小学校の運動会」
坂本 賢志

 

 今日はどうぶつ村小学校の運動会、子どもたちは朝から大はりきりです。特に元気なの
は子ライオンの『レオ』、彼は赤組キャプテンです。それから小ゾウの『パオ』、あしかの
『オット』も赤組です。白組は子ウシの『モー』、子ジカの『ぴょん太』、そしてことし小
学校に入学したばかりの竜の子『ズッキー』です。
  まずは綱引き。学校一力持ちの『パオ』がいれば赤組の勝ちは絶対だとみんなが思って
いました。ところが綱引きが始まるとアラふしぎ!一番チビ助の『ズッキー』が「えいっ」
と力を込めると赤組のどうぶつたち、いえっ白組の仲間までもずるずると引っ張られるの
です。竜はゾウよりも力持ちなのでしょうか?綱引きは白組の勝ちとなりました。
  続いて玉入れ。笛が鳴るなり子ライオンの『レオ』は玉をあしかの『オット』にパスし
ます。『オット』は器用にそれを鼻で突いてポンっとかごに入れます。さすがサーカス団一
家の『オット』。でも勝ったのは白組でした。なぜなら竜の子『ズッキー』が玉を両手いっ
ぱい抱えるとすう〜っと宙に舞いあがり、かごの上まで飛んでいって玉をどんどんほうり
込むんです。『レオ』はあんなチビ助の『ズッキー』にしてやられるのがたまりませんでし
た。
  いよいよ最後の種目、親子リレーです。この時ばかりはお父さんたちも必至です。とこ
ろが竜の子『ズッキー』のお父さんが来ていないのでチーター先生がかわりに走ると言い
出しました。どうぶつ村で一番足の速いチーター先生が相手だと誰もかなわない、そう思
った『レオ』が言います。
「お父さんが来てないんだからズッキーは失格だろ。大体本当のどうぶつの運動会にズッ
キーが出ることがおかしいよ。竜って想像のどうぶつだろ。生まれたところだってドコか
もわかんないし、ズッキーはオレたちと仲間じゃないんだよ!」
  この言葉に『ズッキー』は悲しくなって涙目で『レオ』を見ましたが構わず『レオ』は
ズッキーは失格だと言いつづけました。
  とつぜん空がまっ黒になり、どしゃぶりの雨が降ってきました。そして雨雲の中から大
きな竜のお父さんが姿をあらわしました。なんて迫力ある姿なんでしょう。いままでお父
さんライオンがどうぶつで一番大きくて怖いと思っていた『レオ』はびっくりして声もで
ませんでした。竜のお父さんが『レオ』に言います。
「レオ君すまんな。わしが来るとこんな風に雨が降るので運動会が中止になってしまうの
だよ。ズッキーには飛んだりせず、ちゃんと足で走るように言うからリレーに出させてや
ってくれないか?」
  『レオ』はうなずくのが精いっぱいでした。泣きべそ顔の『ズッキー』にゆっくり近づ
いた子ウシの『モー』が言います。「ぼくはズッキーみたいに空は飛べないけどズッキーと
同じように頭に角があるでしょ。ほら、ぴょん太にも。みんな仲間だよ。」
  その言葉がうれしくて『ズッキー』は元気が出ました。竜のお父さんはにっこり笑って
空に帰っていきました。すると空はさっきのどしゃぶりがうそのように晴れました。
  さあ、競技再開です。結果は?親子リレーは赤組の勝ちでした。なぜかって?チーター
先生がいくら速くてもバトンを受け取った『ズッキー』がねぇ。
  だって竜の足ってとっても短いんですもの。